ブック・レビュー 失望に終わることがない
榊原 寛
ワールド・ヴィジョン・ジャパン 理事長
本書は、一瞬にして愛娘を奪われてから三十七年間、母として、苦難に立ち向かうキリスト者として、一女性の魂に神様が語っておられる熱いメッセージです。
一章「希望」では、孫のウンギョンさんとモンゴルで会い、別れのときの言葉、「私はもう一度、『今日みたいなことが起こるのだから、必ずまたいい日がくるから、希望だけは捨てないでね。絶対に希望ですよ』と言って窓から手を差し出すと、向こうも握り返してきて、涙をためながらも笑顔で『うん』とうなずきました」に心打たれます。「神の愛による希望は」「失望に終わることがない」という信仰を奮い立たせてくれます。
二章の「祈り」のページをめくると飛び込んできた、「ほんとうのことがわからないのが、いちばんつらいこと」という言葉。それを支えてきたのは、神様への絶対的な信頼と祈りでした。その祈りは、「たじろぐな。わたしがあなたの神だから」(イザヤ41・10)というみことばに裏打ちされたものでした。「祈って祈って、神様を信じて、『助けてください!』と祈ってきた時、考えられないことが起きました」と記されています。私たちも「祈って祈って、神様を信じて、『助けてください!』」と祈ることです。三十七年間の大変さの中に、「心の底では私はいつも平安でした」という横田早紀江さんの魂は、主の平安によってぶれることがありませんでした。
三章の「苦しみの価値」には、このような信仰の息吹を感じます。「この事件がなければ、キリストに出会うこともなかったでしょうし、クリスチャンになることもなかったでしょう。私は、こうして長い年月、神様に愛されて訓練していただいて今日があることを、心から感謝しています。」『愛は、あきらめない』とは、神様が私たちのことについてあきらめるお方ではない、との力強いメッセージです。「夕暮れには涙が宿っても、朝明けには喜びの叫びがある」(詩篇30・5)神様が、必ず、喜びの叫びが上がる朝明けを備えてくださいます。ですから、本書は必ず、聖書を片手に読んでいただきたい書なのです。