ブック・レビュー 弱さ、不安や恐れが
主との出会いでいやされる
金谷政勇
保守バプテスト同盟 いしのみなと教会牧師
著者とは、神学校でともに学び、交わり、議論に参加して、学生同士で互いの成長を促し合ったものです。その授業中、おそらく教師たちに最も数多くの質問をしたのが著者で、時には外部講師にも遠慮のない批判を浴びせ、主張する根拠となるものへの執拗な議論展開は、教室内に良い緊張感をもたらしてくれました。また、日に日に個人的に交わりを深めていくと、何とも言えない著者の人間的な温かみに触れて、心を開いて話すことができたのを覚えています。
本書は、自分の弱さ、抱える不安や恐れ、罪深さ、足りなさすべてを主の御手にゆだねた中での、生き生きとした証しに満ちています。あるセミナーで、他の人に不快感を与える発言をしたときのこと。講師は、著者の隠された問題を鋭く察知し、厳しくそのことを指摘します。恥をかかされたと思う著者を前に、講師はほかの参加者に言います。「彼に安易な慰めのことばをかけてはならない」(三四頁)と。そのやり取りの中で、著者は自らの抱える問題の根本的な解決へと導かれ、みことばの主との出会いによっていやされ、心に感動が満ちたと言います。みことばを知ることは知識ではなく、神との「パーソナルな出会い」(一〇〇頁)が恵みとして与えられる―。これは著者の個人的な体験だけでなく、ときにキリスト者は、愛の足りなさゆえに他者を傷つけてしまっても、あらゆる罪を贖うことのできる神の愛によって、自分の失敗や過ち、弱さを率直に認めて受け入れ、教会で分かち合うことができるのです。
本書を一読し、著者の体験と同じく、悩みの中にある自分を再発見することができました。神のことばと自分のたましい、他者のたましいとに正直に向き合うなら、主が重荷を一緒に担ってくださっていることに気づき、悩みが以前のような悩みでなくなり、いやされて、新しくされるための出発となることを教えてくれます。また本書は、詩篇を理解する上での入門書としてだけではなく、読者は新たな神のことばを分かち合える人となって、今度は悩みを抱えている人の友となっていくに違いありません。