ブック・レビュー 心の底深くに刻み込まれた
傷から癒やされる


中台孝雄
日本長老教会 西船橋キリスト教会牧師

私たちはだれしも、癒やされがたい心の傷を、大なり小なり抱えています。
人生の途上で負った傷は、ちょっとした小説や流行歌の断片で癒やされることもありますし、癒やされたと思いつつ、人生の折々に息を吹き返して、私たちを長く悩ませることもあります。究極的な癒やしは神のお取り扱いによって得られるものなのでしょう。ストーミー・オマーティアンの著作は、『子どもを守る30の祈り』『夫をささえる30の祈り』(CS成長センター)等々、日本でも紹介されてきました。人生や家庭の問題への解決策を、幾つかの項目に巧みに整理しながら提示してきた著作群に、教えられ、励まされ、自分の問題の解決への糸口を得たかたも多いことでしょう。
本書では、著者自身の、幼少期からさまざまな傷を負って、苦しく解き放たれない人生を送り、ようやくキリスト教信仰によって、神からの癒やしを得た過程を率直に語りながら、神のことばや聖霊の働きによって、心の底深くに刻み込まれた傷から癒やされる七つの秘訣が教えられています。特に、避けるべき罪の落とし穴については十五の項目で詳しく取り上げられています。
「霊の戦い」を強調する際に好んで用いられる「束縛」「解放」「宣言」といった表現も多用されますので、好ましく思われるかたと抵抗を感じるかたとがおられるでしょうが、著者は適切なバランスを保って、「サタンの攻撃」だからといって「当人の罪の責任」が免責されるわけではないこと、「聖霊によるいやし」が「健全なカウンセリングや通常の医療」を否定するわけではないことに触れます。
個人的には、世俗の文化や芸術(小説や絵画、映画、演劇、流行歌など)を通して神が与えてくださる一般恩寵の面も(そうしたものを通してサタンが家に入り込んでくるという視点ではなく)もう少し積極的に評価したらよかったのに、とは思いますが、そうした軽度な癒やしでは拭えない、人生の傷を負ったかたがたへのよい手引きとなることでしょう。