ブック・レビュー 慌ただしい毎日の中できちんと人生を生きる秘訣


みなみななみ
作家、イラストレーター

『大草原の小さな家』のファンでもなく、ドラマで三つ編みの少女時代のローラ・インガルスを何度か見た程度の私でした。そのローラの百年前の言葉が、今の私の指針になり、励ましになるなんて嬉しい想定外でした。水彩のカントリー風の挿画がなければ、西部開拓時代に育ったローラの本と忘れるくらい、現代の慌ただしく煩雑な毎日に迷い疲れた心に染みる言葉の数々です。
きちんと人生を生きる秘訣を知りたいと思っていた私に、ローラはその鍵を示します。居間から見える窓の景色、青い空や、飛び立つカラスの中に。
「日々の一瞬一瞬を味わい、楽しむことこそ、真に人生を生きることだと思います。そしてその人生の楽しみとは間違いなく、日常生活のあちこちにちりばめられている美の中にあるはずです」(三四頁)
書かれている内容は食事、片付け、お金や時間の使い方、仕事や余暇、子育てやご近所付き合いのことなどなど、普通の生活。その中で、毎日を丁寧に生きていくこと、本当に大切なものを大切にすること、ローラが試行錯誤の中で見つけた考え方、生き方に教えられます。
私自身を顧みると、聖書のことばと生活は別物、バラバラ感が否めません。この本では、みことばを縦糸に生活を横糸に紡いだ、タペストリーのようなローラの人生が伝わってきます。私も見習いたい。
その秘訣は「私は子どものころ、古き良き時代のやり方で、聖書の言葉を暗記しました。……そしていつも頭の中で、たくさんある聖句の中から、意味を関連づけられるものを選んで思い巡らす、ということをしていました。そのおかげで、私は聖書の思想を目に見えない大切な収穫物として自分の中に蓄えることができました」(一〇三頁)
美しい日本語訳で文学作品のようでもあり、聖書に興味のない方には、しゃれた生活雑誌のコラムを読んでいるかのような、親しみやすいエッセイ集。私にとっては新しいデボーションの蔵書になりました。

『大切なものはわずかです。
ローラ・インガルス29の知恵』
ローラ・インガルス・ワイルダー 著
結城絵美子 訳

B6変判 1,100 円+税
フォレストブックス