ブック・レビュー 戦後四年、いのちのことば社文書伝道のルーツをひもとく
伊東 道夫
日本福音キリスト教会連合 花の木キリスト教会牧師
私たちには両親がありますが、ある程度の年齢になりますと両親のルーツを知りたいと思うようになります。同様に、今、私たちが聖書をはじめ、数々の文書によって信仰の導きを得たり、聖書信仰に立つ霊的養いを受けることができるようになっているルーツを知りたくなります。
本書は、いのちのことば社の創設者ケネス・マクビーティ宣教師自身によってあかしされた、戦後日本の文書伝道物語です。
この本の魅力は、戦後四年しか経っていない荒廃した日本に、神様はどのようにしてマクビーティ宣教師夫妻を遣わされるようになったのか、そして現在のいのちのことば社が誕生していったのかその秘話がまとめられていることにあります。その働きは、創設者に初めからわかっていたことではなく、神様が日本の宣教のために、その導きの扉を開いて行ってくださったということが、この本によってパノラマのように分かってきました。
第一部は、戦後日本の文書伝道物語として記され、第二部はビジネスと宣教という主題で記されています。マクビーティ宣教師の生い立ちから日本に遣わされるまでの様子と、日本に着いてから文書伝道に召される過程、そして最初は中野区の小さな六畳間の事務所から、また、一枚のトラクトから始まり、さまざまな試練と困難の中で、現在のいのちのことば社の基礎が築かれていった道程が、誰でも親しめるように物語風に語られています。
第二部のビジネスと宣教では、人を動かす理想的リーダーシップ、困難と失望に直面した時の対処法、なぜ、日本でキリスト教は広がらないのか、信仰の違いを乗り越えていく方法、中国の教会に学ぶ成長の原則などについて、四十九年間に及ぶ日本やアジアでの経験を通して語られ、私たちの信仰生活に多くの示唆を与える書となっています。
表には現れない、戦後日本のもう一つの宣教の歴史を教えられると同時に、神への信頼と謙遜がいかに大切かを学ばせられました。