ブック・レビュー 政治家から芸能界まで登場!
いまどきクリスチャンへのメッセージ
久米淳嗣
日本ナザレン教団 学園教会牧師
深刻な問題を取り扱っているのに、不思議と重たく感じない。お叱りのことばなのに、どこか面白い。言われると耳が痛い話題なのに、優しささえ感じる。
そのヒミツは水谷潔先生の「語り口」にあるのでしょう。新著『それって大丈夫? いまどきクリスチャンへの24の問いかけ』はそのタイトルの通り、「いまどきクリスチャン」に届く語り口となっています。
意見が分かれる話題について議論したり、教会の抱える課題について苦言を呈すると、どうしても場の雰囲気が壊れやすくなります。それで教会は波風を立てないことを優先し、それを愛の配慮と考えて、語るべきことを語らずに済ましてしまうことさえあります。その一方で「本当のことを知っているワタシが、何もわかっていないキミたちに教えてあげよう」という上から目線から語られると、どれだけ正しいことを言われていても素直に心を開いて聞くことができなかったりします。「いまどきクリスチャン」の間でも、そんな上から目線のことばがどれだけ飛び交っていることでしょう。語らなければ届かない、でも上から語っても届かない。困った、困った。そこで水谷先生の登場です。
先生の「語り口」には、その上から目線がありません。政治家から芸能人まで登場する例えの絶妙さやことば遊びの巧みさは、単に面白おかしく読ませるためではなく、深刻で厳しい問いかけをわたしたちの心に届けるための工夫と思いやりに満ちています。本著の「悪魔からの手紙」シリーズが、おそらくご自身が悪魔から受けた誘惑の体験を反映しているように、いつも水谷先生のことばの裏には、自分自身が主から問われたこと、傲慢ゆえに失敗したこと、経験した痛みや悲しみが込められています。クスリと笑って読みながらも、大切な問いかけとしてズシッと受け止めることができる語り口はそこから来るのでしょう。
「いまどきクリスチャン」に届くことばがここにあります。