ブック・レビュー 新版『教会 なぜそれほどまでに大切なのか』
中山信児
日本福音キリスト教会連合 菅生キリスト教会牧師
教会が抱える問題を受けとめ、癒す神の働き
十年前に本書の原書が出たとき、書店で見つけてすぐに購入しました。それが翻訳されて本書の旧版が出たときにも、すぐに注文しました。今回、書評執筆のお誘いを受けたときも、スケジュール的に厳しかったのですが、やはり、引き受けてしまいました。あのヤンシーが、自身の教会生活を証ししながら、教会について書いた本ですから、教会に仕える身の牧師としては目を通さないわけにはいきません。実を言うと、私は、ヤンシーには他の作家にない吸引力を感じるのです。
ヤンシーという人は、きらきら輝いているわけではないけれども、いつもほのかに暖かい光を発しています。豪華なフルコースというよりは、愛情のこもったあったかい家庭料理の味がします。人気作家なのに、目立たずただ忠実に信仰の歩みを続けている無名の人たちのような空気と目線を持っています。そんなところに惹かれるのです。
そんな人だから、さぞ穏やかな教会生活を送ってきただろうと思うと、見事に裏切られます。シカゴの教会での様々な出来事を読むと、恐らくたいていの人は、あんな教会は自分にはとても無理だと思うでしょう。恐れ、当惑、怒り、不安といったマイナスの感情が・それをもたらす人とともに・閉め出されることなく教会の中に存在することに驚かされます。しかし、それらが教会を傷つける以上に、主の教会がそれらを受けとめ、同化し、癒そうとする、その現実、そのプロセスに感動します。そして、そこには様々な人の祈りや働きがあるけれども、いつも真ん中におられるのは神さまであり、働きは神さまの働きであることに気づかされます。
ところで新版と旧版との違いですが、カバーがソフトになり、聖書が『新改訳聖書 第三版』に差し替えられ、訳者の後書きがつきました。カバー折り返しに載っているヤンシーの写真は、いつものように少し頼りなげで、あったかい顔をしていました。