ブック・レビュー 朝鮮半島に統治者意識を抱く
日本人と教会の姿
登家勝也
日本キリスト教会 横浜長老教会牧師
「併合」が韓国併合などと、慣用語になってしまった昨今だが、岩崎孝志牧師(故人、今年一月逝去)もこの用語が朝鮮の民族的、文化的絶滅を目指した日本の政策の表現であると語っておられる。狂気にかられて東北アジア、東南アジアの大地と人間をむさぼり喰った日本帝国主義だが、日本のほとんどの教会がこれに同調していた。批判と抵抗はほんの一、二の例外に過ぎなかった。山口陽一牧師の言われる通りである。現に、今もって朝鮮・韓国問題における最大の障害は、かつて侵略に加担し、いまだに統治者意識をもってこれに対峙する日本人、日本教会のありようなのだ。竹島(独島)問題、尖閣諸島問題、北方領土問題、拉致問題のどれひとつをとっても、戦争の過去の反省のなさ、戦後処理での怠慢・不誠実という条件下で、解決不能の様相を呈している。それは「慰安婦」問題だけではないのだ。
朱基徹牧師たちの抵抗とは、「神社参拝を容認すること」への抵抗に通じるが、元来福音宣教に対する自由主義的聖書解釈の破壊的影響との戦いであったことを今、公にしてくださった朴元珠牧師に感謝します。
孫良源牧師については謎が多く、今後の解明を待ちたいが、李象奎牧師、さすがに新しい知見をお示しくださった。ただ私たちにとってとりわけ困難なのは、南北統一選挙をめぐる政情の精確な説明が不足していることである。
筆者も訪れたことのある韓国・小鹿島のハンセン病療養所がホーリネスの伝道地であったとは感激に値する。中田重治の朝鮮への同情があくまで統治者意識と表裏のものだったとは、予想通りとはいえ、上中栄牧師の功を賞したい。何かとこの文章は新鮮で啓発される。
金谷政男牧師は在日の人なればこそ、貧しく困苦のうちにある人たちが、富む支配者らの意識に同化されてしまっている、この困難をよくぞ言ってくださった。指紋押捺拒否運動以来の同じ戦いの仲間の証言であり、貴重なものである。
執筆者たちは、大部分知友である。購読をおすすめするのは正直な気持ちからです。
『日本の「朝鮮」支配とキリスト教会』
信州夏期宣教講座 編
(岩崎孝志・上中栄・山口陽一・李象奎・朴元珠・金谷政勇)