ブック・レビュー 横田夫妻の「命の講演会」


榊原邦子
日本ホーリネス教団女性教職

横田夫妻は、立川市立第七中学校で四回の講演会と交流会を持ちました。本書は、中学生たちの応答、感想文と佐藤佐知典教諭の総括と生徒へのメッセージによって構成されています。
一章は、横田夫妻の「命の講演会」の内容。
二章は、夫妻と生徒たちの交流会。そこには、生徒たちとの交流の写真と率直な意見の交換が記されています。
三章は、生徒たちからの応答とメッセージ。生徒たちの言葉は、本人、保護者承諾の上実名で記されています。
四章で「いのちの授業」を終えた佐藤教諭が、「私は、当時高校生だった。めぐみさんの通学路を私たち家族も毎日利用していた。……行方不明の現場をわずか15分違いで通っていためぐみさんと同級生の妹とともに、突然いなくなっためぐみさんを捜した。……近所に住んでいながら何も気づいてあげられなかったことを長年悔やみ続けた。」(一一四頁)と語っています。その思いの中で、教諭は拉致問題のために立ち上がったのです。拉致されためぐみさんと同年代の中学生たちと共に、時には街頭に立ち救出の署名を叫び続けました。学校ぐるみの政治活動家と口汚いののしりを受けながらも、声を張り上げるその真剣な姿に、生徒の心に一つの思いが起きてきました。中学生たちは、夫妻の講演会を通して大きく成長していきました。「この問題が解決するまで後輩たちにも伝え続けよう」、「一人では無理でも、大勢集まれば人の命を救うことができるはず」と。生徒感想文について教諭は、「時が経てば、やがては風化されるだろうと甘く見ている大人たちへの警鐘でもある」、「日頃親に反発し問題行動を繰り返す生徒が感銘を受け」、「生徒たちは、命に対する感性を高め、尊び合い、めぐみさんの帰国する瞬間を、横田夫妻同様一切の疑いもなく強く信じ切り、待ち続けている」と記しています。
日本の中学生はすごい! こんなに優しい心、人を思いやる心、寄り添う心を持っているのだと感動しました。私も拉致問題解決のためにもっと強くありたいと願いました。

『いのちの授業    ―横田めぐみさんが教えてくれたこと』
横田滋・早紀江&中学生たち 著
B6判 926円+税
いのちのことば社