ブック・レビュー 生涯の終わりに見つけた心の拠り所
この本は、NHK連続テレビ小説「あさが来た」のヒロイン・あさのモデル、明治期の女性実業家・広岡浅子の生涯を紹介したものです。
多くの写真やイラスト、人物紹介、そして彼女の珠玉の言葉がたくさん散りばめてあり、コンパクトにまとめてありながらも、彼女のことをよく知ることができました。
浅子は裕福な家庭に生まれ、わずか二歳で婚約、十七歳で結婚。その後、夫には妾が。浅子自身も妾の子どもでした。女性が「父親や夫の物として扱われる」状況に置かれていました。
今、私は所属教団の社会委員会と「部落問題に取り組むキリスト教連帯会議(部キ連)」に関わり、貧しさゆえに「物同然に」扱われた女性たちのことも学ぶ機会がありますが、浅子たち裕福な家庭の女性たち、そして妾とされた女性たちもまた「物として扱われる」という苦しみがあったことを知りました。
女性たち自身がそのことに気づき、人間らしく生きるために女性教育は必要だと考え、浅子はそのために貢献しました。彼女自身は「女子に学問は必要なし」と学ぶことを許されませんでした。今や当たり前のように男子と同じく教育を受けられることは、感謝すべきこと、彼女らの活躍の恩恵だったのです。しかし残念なことに、いまだに、女性を性の道具・出産の道具としか見ていない言動、女性差別としか言えないような発言は後を絶ちません。
浅子は自分の不屈の生涯を「九転び十起き」だと表しています。巻末、編集者の「最後に起き上がった場所は、神の前でした」との言葉に感銘しました。彼女は六十歳過ぎてから大病を患い、さまざまな導きの中、キリスト教の信仰を持ちました。父にも夫にも甘えることを知らず、自力で生きてきた浅子が生涯の終わりに、「神の子」としての心の拠り所を見つけたのでした。この本を全年齢層の女性に読んでいただき、自分の置かれた場所にある女性ならではの問題に対し、自分は何ができるか、祈り求めていただきたいです。