ブック・レビュー 神さまのいのちに生かされて
窪寺俊之
聖学院大学こども心理学科長、人間福祉学研究科長
西村隆さんの新しい本が生まれました。前著『神様がくれた弱さとほほえみ』が出てから十年になりますが、前著の感動がよみがえってきます。病気(ALS〔筋萎縮性側索硬化症〕)を抱えながら、四人の子どもを育てる西村隆さん、宮本雅代さんご夫妻の姿に心が引きつけられます。固定観念に縛れている自分から解放されて、もっと自由な世界に生きることを教えてくれます。
西村さんは、自分を縛っていたものの一つに信仰があったといいます。「正確に言えば、西村隆が作った『キリスト者としてのあるべき生き方』に縛れていた」(四七頁)と書かれています。「キリスト者として明るく振る舞う一方、ひとりになると病気や自分自身を受け入れてはいませんでした。……祈りたいことは山のようにありました。その多くは神さまへの問いかけ、そして抗議です。『なぜ、私に病気を与えたのですか。私はこの病を与えられるほどの罪をいつ犯しましたか』」(五一、五二頁)と、ヨブ記と同じ問いに苦しんでいます。
そんな西村さんを変えたのは、ダウン症で生まれた三男の止揚君をひざの上に抱いたときであるといいます。ずっしりと重たい止揚君の鼓動、温もりにふれて存在の重みを感じ、「いつの間にか、なにか大きなものに……抱かれて寝ている私がいました」「少しずつ日常の風景が違って見えてきました」(五五頁)と書いています。そして、「子どもたちは私が病気だろうが、障がいがあろうが、それもこれもすべてありのままを受け入れていました。……今は疲れ切り、泳ぐのをやめても、おぼれません。力を抜いて波間を浮かんでいると、豊かな風景の中に自分がいることに初めて気がつきました」(一〇六、一〇七頁)と。ここを読みながら、神さまのいのちに生かされる西村さんの姿に感動しました。そして慰めと希望を与えられました。
今、病の中にある人、苦難の中にある人、信仰に疑問を感じている人にぜひ読んでいただきたい本です。ここには、家族への愛、人生への感謝、神さまへの信仰が肩ひじ張らずに書かれています。多くの人を慰め励ますことでしょう。