ブック・レビュー 福音を「ほんとうに理解」するために

 『バイブルワールド』
飯島勅
拝島バプテスト教会協力牧師/聖書考古学資料館理事

私たちが神のことばに信頼をおき、神のことばに導かれて歩むためには、読んだみことばを正しく理解することが欠かせません。使徒パウロは次のように述べています。「この福音は、あなたがたが神の恵みを聞き、それをほんとうに理解したとき以来、あなたがたの間でも見られるとおりの勢いをもって、世界中で、実を結び広がり続けています。福音はそのようにしてあなたがたに届いたのです」(コロサイ人への手紙1・6)
この「ほんとうに理解」するために私たちに求められる準備として、そのみことばがどのような状況において記されたのか、その時代、地理、文化という背景(聖書の舞台)を知ることはとても有意義です。著者は、序文においてこのように記しています。「地図は、適切に読むなら、場所を示す以上の意味を持っている。歴史を読み解く手がかりとなり、異なった時代や文化を理解する視点を与える。……聖書の舞台を知ることによって、聖書の物語を新たな視点で見ることができるようになり、聖書に記された出来事を現実のものとして理解できるようになる」 
本書は、その目的を果たす、まことに適切な書です。
一つのテーマが見開きページで完結し、その中に地図と年表が置かれ、簡潔でわかりやすい文章による説明が付けられています。所々に衛星から見た写真や図が用いられているのも、最近ならではの方法と思います。
著者の信仰的立場は保守的で穏健と思われますので、安心して本書を利用することができます。私は、ある聖書学院において、ほぼ同じテーマを内容とする授業を担当していますが、今後、この書を教科書として使わせていただくことを考えています。ただ、地中海世界に展開している「聖書の世界」のほとんどを旅し、様々な写真を撮影してきた私としては、内容の理解を助けるために、本文にもう少し多くの実写が採用されたら、さらに良かったのではないかと思います。