ブック・レビュー 聖書から広く、じっくりと味わう


古川和男
日本長老教会 鳴門キリスト教会 牧師

「あなたは、私をさとして導き、/後には栄光のうちに受け入れてくださいましょう」
本書の巻末には三頁の聖句索引があります。この詩篇七三篇二四節は最も多く引用されているようです。サラ・ヤングはこうしたみことばを、「わたし……あなた」という文体で綴りなおします。前著『わたしは決してあなたをひとりにしない』も同じスタイルで書かれた一年分の黙想書ですが、本書は各黙想の最後に、手がかりとした聖句を三箇所そのまま載せたものを一五〇集めています。
もちろん本書は、聖書に並ぶ「啓示」でもなく、著者も「聖書的でないものがあれば、いっさい受け入れない」と明言しています。むしろ本書は、著者が「ライム病」という難病に七転八倒する中、みことばがこれほど鋭く、親しく、深く、力強く、迫るように響くのを聞きとってきた記録です。病苦と葛藤の暗やみで聞き続けた個人的な恵みだからこそ、読者の私たちも、自分にも与えられた主の力強い語りかけを分かち合ってもらえるのです。
聖書そのものが、冒頭の詩篇のように大胆なイメージの宝庫です。信仰は知識だけで分かることは出来ません。言葉を超えて伝えられているイメージをそのまま受け止め、思い巡らし続けることで、信仰は深まりと広がりを持ちます。その証しが本書です。本書をシェアするために、サラさんはご自分の弱さ、恥、迷いやすさ、不信仰、恐れ、傷、怒りなどの感情も率直に差し出してくれています。きっと本書が滋養となる方は少なくない、と信じます。
著者の義兄ブルース・ヤング師が「サンシップ・コース」なるセミナーを主催しています。天の神の子である事(サンシップ)を改めて深く学び、神が私の「永遠の父」としてどれほど私たちを愛しておられるかを、聖書から広く、じっくりと味わうのです。評者も「天にいます私たちの父」だとアタマで理解してはいましたが、目から鱗が落ちる思いで、このイメージを知る幸いに与りました。本書にもそれに通じる心を感じます。