ブック・レビュー 聖書とは何か―
それは、キリストを証しするもの

 『小林和夫著作集 』
目黒章子
日本ホーリネス教団 八王子キリスト教会員

いつのことか、記憶は定かではありませんが、小林和夫先生を私の車でお迎えし、講演会の会場までご一緒したことがありました。そのときすでに著作集の一、二巻あたりが出版されており、「楽しみながら、毎日一つずつ読んでいます」と申し上げますと、「今、詩篇を見直しているところだけど、いいよー」と、まるでいたずらっ子が、隠している宝物を見せたくて仕方がないというふうにお話しされていました。
この著作集は、小林先生が東京聖書学院教会において、実際に説教されたものに手が加えられたものです。説教集ですので、信徒である私にも読みやすいものでありながら、歴史的、神学的考察も深くなされています。第一巻「聖書66巻のキリスト証言Ⅰ」説教の冒頭で、先生は聖書66巻の講解説教をなさると宣言されます。そして4巻までで、一部を除き、おおよそ聖書全体にふれており、鳥瞰図のように聖書の全体像が見えてきます。部分だったものが、つながってきます。
さらに、四巻でほぼ旧新約聖書が語られているというダイナミズムの中にありながら、そこに粗雑さや荒さはなく、鮮やかな一本の光に導かれながら、聖書の神髄を見せていただいているという印象を持つことができます。これは、講解を始めるにあたり、ヨハネによる福音書五章三九節を用いて、「聖書とは何かといえば、それはキリストを証ししているものである」(第一巻/一三頁)とお話しされている小林先生の姿勢が全編をつらぬき、ぶれがないからだと思います。小林先生の説教は、よく知った箇所からも、「そういう秘密が隠されていたのか」と、新鮮な驚きを聴衆に与えてくださいます。それは、先生の卓越した聖書への造詣の深さに起因していることはいうまでもありませんが、何より、先生ご自身が聖書が大好き、そして発見したものは隠しておけないという少年のようなお心を持っていらっしゃるからではないかと思っています。
やがて「詩篇講解」(第五巻~)が始まりました。お体にご留意し、著作集が完成するように、心からお祈り申し上げます。

『小林和夫著作集』
第一~三巻、第四巻
聖書66巻のキリスト証言 Ⅰ~Ⅲ
ヨシュア記、箴言、イザヤ書6章講解
A5判 第1巻 4,200 円
第2,4巻 各4,410 円
第3巻 5,040 円
いのちのことば社