ブック・レビュー 聖書の醍醐味を味わう
山口 光
日本同盟基督教団 シオンが丘キリスト教会牧師
ところで聖書を普段読む方へ質問します。そもそも「歴代誌」を読みますか。歴代誌は聖書六十六巻中「読まれないトップ3」に入る、と誰かが言ったものですから―。だからこそ、聖書の醍醐味を味わうために、この書を開いてみてはいかがでしょうか。この注解書はそのために役立ちそうです。
著者マーティン・J・セルマンは、長年にわたりスポルジョン・カレッジで教鞭をとってきました。その教授が、旧約史を調べるように読む学生たちと一般信徒へ向けて、分かりやすく解説したものがこの注解書です。セルマン教授の福音主義に立脚した説明と、旧約学者としての豊富な知識とが、 歴代誌の学びをリードしてくれるはずです。
私は個人的にセルマン教授の英語版をこれまで使っていましたが、今回この日本語版を手に取り、原書に忠実に訳されているのをみて感心しました。造本も美しく仕上がっています。
ここで簡単に歴代誌の内容に触れますが、この書はご存じのように上・下巻ある歴史書です。イスラエル民族の歴史ですが、下巻においては、主に王国が分裂した後のユダ国の歴史を記録しています。自らの歴史、律法(トーラー)、そして礼拝に関して無頓着になっていた「捕囚以降のイスラエルの民」にとり、この歴代誌は、主なる神とともに刻んだ歴史を見直すため、礼拝の本質を考えるために書かれました。セルマン教授は、その部分を大切にしつつ、律法と歴史を通して自己開示するイスラエルの神を紹介しています。私は、現在、新潟聖書学院で旧約聖書の原語と歴史を教えていますが、その立場から言えば、聖書を学ぶ者たちには、この一冊に加えて聖書年表や地図等を開きながら歴代誌を読んでみては、とお勧めします。また、牧師であれば個人の書斎に置きたい一冊ですが、どうせなら日曜学校の先生方や信徒と「グループで学ぶテキスト」として、 教会の蔵書に一冊加えてみてはいかがでしょうか。