ブック・レビュー 苦難の中で、それを負い、
神に従う預言者たちの姿に学ぶ

 『今、ここに生きる預言書』
塚田直樹
福音伝道教団 前橋キリスト教会芳賀チャペル牧師

高橋秀典牧師の旧約聖書解説シリーズ五冊目として出版された本書を拝読させていただいた感想は、書名の『今、ここに生きる預言書』とあるように、現代に生きる私たちに神のみことばは今も生きて語られている、と実感することができたということです。預言書と言うと、紀元前の預言者たちに与えられた預言で、どこか現代に生きる私たちには別世界の出来事のように感じてしまう向きがあるように思います。
しかし、本書にも多く指摘されているように、イスラエルの歴史的背景に注目すると、預言者たちの生きた時代は、外交的、政治的な緊迫感や経済至上主義的価値観などによる混迷がもたらす問題に満ちており、人々は苦難の中に立たされていました。それを考えると、現代に生きる私たちにも共通する問題意識や閉塞感があることに気づかされ、旧約聖書の預言書は、現代に生きる私たちに決して古くない、今、生きて語られている神のみことばであるということを思わされました。
本書は、主にイザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書、ダニエル書を取り上げ、特に、イザヤ書、エレミヤ書、エゼキエル書では、新約聖書にも引用され、親しまれている聖書箇所などを紹介し、その前後の文脈も丁寧に概観され、解説されています。ダニエル書は、全十二章を網羅して解説されています。また、新約聖書の預言書であるヨハネの黙示録についても要約した解説が収められています。よく引用される聖書箇所について、文脈、背景を丁寧に捉えながら解説されていますので、聖書通読の参考書として本書を用いることができますし、また、現代に生きる私たち読者に対しての適用も意識して書かれていることが、本書の最もおすすめしたいところです。
最後に、預言者たちの生きた時代は苦難に満ちていましたが、目の前の苦難を積極的に担い、神に従っていく預言者たちの姿に学ぶことのできる本書は、現代に生きるキリスト者に、苦難の中でどのように生きていくべきかの一考を与えてくれることと思い、おすすめいたします。

『今、ここに生きる預言書』
高橋秀典 著
四六判 2,100 円
いのちのことば社