ブック・レビュー 親子で聖書に親しむきっかけを!
込堂 一博
日本福音キリスト教会連合 旭川めぐみキリスト教会牧師
現代の混沌とした社会の根源的原因は、人間の真の座標軸であり、基準である聖書を知らないことにあると常日ごろ思わされている。
今こそ、大人にも子どもにも、聖書のメッセージをわかりやすく伝えることが急務だ。そのような中で、聖書に親しむきっかけともなる『聖書ものがたり絵本』が出版されたことは、時宜にかない喜ばしい。
絵本の文章を書かれた作者は、あのNHKテレビの人気人形劇「ひょっこりひょうたん島」を世に送り出した武井博氏。武井氏は、児童文学作家の経験もあり、現在は牧師として活躍されている。その武井氏の文章は簡潔でわかりやすい。時として難解な聖書の内容を、子どもでも理解できる文章で表現されていて見事だ。
絵を担当されたのは日本画家の小林豊氏。聖書のリアリティと中東の空気感を大切にして描いたという。素朴とも感じられる絵に、聖書人物たちの内面的なリアリティがよく表現されている。穴に投げ込まれた時のヨセフと兄たちの好対照の表情、ヤギの血で染まったヨセフの服を見入る父ヤコブの慈愛と苦悶に満ちた表情、燃える柴を前に、神の声を畏れおののいて聞き入るモーセの表情など。そして、聖書世界の自然描写が迫力をもって読む者の心を捕らえる。さらにこの絵本は、主が聖書の登場人物たちをどのように導かれたかがよくわかる。
親がわが子に読み聞かせることにより、親子の温かなふれあいが生まれ、親子ともども聖書に親しんでいくきっかけの絵本になるに違いない。大人も子どもも、この絵本を読むことにより膨大な聖書の中心的流れを理解しやすくなる。「絵本は単純に子ども対象の本などではなく、大人にも計り知れぬ意味を語りかけ、深い思いをさせてくれる本だということを改めて確信させられます」(『松居直のすすめる50の絵本 ――大人のための絵本入門』松居直著・教文館)。この言葉に正直同感する