ブック・レビュー 証言者に寄り添う
第三者がまとめた貴重な証言
岸田誠一郎
福音交友会・岸和田聖書教会牧師
震災から、もう少しで三年になろうとしているが、特に福島は、震災の被害だけではなく、原発事故による放射能汚染という重い課題を背負い続けている。その課題が大きく複雑であるにもかかわらず、福島の方々の心の叫びを聞く機会は決して多くはない。この本は、そんな福島の課題を知るための大きな助けとなる貴重な一冊と言える。
この本の中心は、九名の福島の女性への取材から得られた証言である。登場する女性たちは、普通の主婦、幼稚園の副園長、牧師の妻などで、立場や年齢が違い、さらには居住地からの避難の有無も異なるが、母として、祖母として放射能汚染という問題に苦悩しながら歩んでこられたという点では共通している。
情報がなく、理解もままならない迷いと不安の中、その場その場で苦しい決断を迫られてきたこと、そして今もその中に置かれていることが、文面からよく伝わってくる。そうして、書き手の思いによる脚色を排した説明が書きつづられ、当事者の「生の声」として紹介されている。
すでにいのちのことば社から、証言集『フクシマのあの日・あの時を語る』(福島県キリスト教連絡会編)が出版されている。当事者の百パーセントの「生の声」は私たちの心を揺さぶるが、証言者に寄り添い、その語られる言葉を真摯に受けとめる第三者が、その内容を整理しまとめることによって、当事者の切実な思いを知ると同時に、その背後にある福島の複雑な現実をより深く理解することができるのである。
「インタビューを終えてわかったことは、『私は福島のことを何にもわかってなかった』ということ」と、著者が「おわりに」に書いているが、私たちも読み終えたときにその気持ちを共有することになるだろう。そして、冒頭の「推薦の言葉」のように、まず「耳を傾け」るために、そして福島の苦悩する方々の「友とな」るために、この本を手に取って読まれることをおすすめしたい。