ブック・レビュー 誰にでもわかる表現で語る福音
泉田 昭
日本キングス・ガーデン連合会長
現代人は、知識はあっても知恵に欠け、平和な世界にあっても平安がありません。
ビリー・グラハムは、この『ほんとうの安息』において、その現代人に対して、ほんとうの安息を得るようにすすめ、「私たちの心の内にとどまり続ける永遠の平安」(一二頁)について語ります。それは、イエスにより、神と和解することによって与えられます。
ビリー・グラハムは、イエスの福音の内容である罪、神、イエス、十字架、悔い改め、信仰、回心、新生、平和、天国の希望について語りますが、キリスト教の専門用語ではなく、誰にでもわかる美しく易しい表現を用います。さすがに、すぐれた大衆伝道者です。
また、豊かな経験によって、適切な例話を自然に用いることによって興味深く語っています。
ビリー・グラハムが、妻ルースとともにカリブ海に浮かぶ島の町を訪れたときのことです。その島に住む七十五歳の世界的な大富豪に大豪邸での昼食に招かれます。その大富豪は、食事の間も楽しむことなく、嘆き悲しんでいるように見え、ビリー・グラハムにこう言いました。
「私は、世界一みじめで悲惨な人間だ」
その日の午後、地元の教会の牧師が訪ねてきました。
イギリス人の彼は、たまたま先ほどの大富豪と同い年の七十五歳で、妻を亡くしたひとり者でした。多くの時間を教会や社会の奉仕のために、また体の不自由な二人の姉妹の世話に費やしていました。彼は、「自分は一文無しです」と笑い、「けれど、この島でいちばんの幸せ者です」と言いました(一四、一五頁より抜粋)。
私は、ビリー・グラハムのこの『ほんとうの安息』を読みながら、キリスト教の福音がわかりやすく、全体として整然と語られていることに驚きました。
私たち日本人は、豊かさの中にあっても不安であり、天国の希望もありません。それだけに、多くの方にこの『ほんとうの安息』を読んでいただきたい、と切に思います。