ブック・レビュー 21世紀ブックレット 20
『キリストの神性と三位一体』
「ものみの塔」の教えと聖書の教え

『キリストの神性と三位一体』
岩村 義雄
超教派ブレザレン教会 神戸国際キリスト教会 牧師

福音派の新機軸のキリスト論

 本書は、三位一体を否定するユニテリアンにアプローチをしている福音派の牧師や、エホバの証人を脱会した方々がキリスト論を正しく構築するのに、有益な良書と言えよう。特に三つのすぐれている点に気づいた。

 まず、ユニテリアンに対し福音派の心髄が聖書から論じられていること。三位一体への急先鋒の批判にも対応している。

 第二に、著者は米国マーレー・J・ハリス博士に師事しつつ学ばれ、キリストの神性を擁護する旗手として十二分に真価を発揮している。テトスへの手紙二章十三節の「神とキリストを区別する解釈」を論駁する中で想定しうる四つの角度からの反論に、キリストの神性を立証していることに読者は啓発されるだろう。福音派の教職者にとって格好の教材となろう。

 第三に、聖書原語がカタカナ表記になっていることで、ギリシア語に精通していない読者でも難しさを感じさせない。聖書釈義をだれにもわかりやすくしている著者の愛、福音の宣教者として資質の深さが伝わってくる。

 欲を言えば、異端の視座に立って、ヨハネの福音書一章一節のa god(『新世界訳聖書』)を展開していただきたかった。なぜなら証人は、ここのa godについては、「一つの神」という解釈をしないからである。むしろ特定の神ではなく、性質を強調するためにa godであるという独特の釈義を強弁している。

 また、出典を記していただきたかった。教理に矛盾を感じたり、歴史的キリスト教会との比較をしている現役の証人ならば確かめる資料が必要になろう。前述の四つの解釈なども図書館や本などで、出典を検証するからである。そして『新改訳聖書』の卓越さに関する著者の論述に敬服するが、他の訳では『新世界訳』と論じ合えない観を呈してしまっていまいかと、老婆心ながら考えてしまった。だが、本書にはハリス博士の気鋭のキリスト論の息吹を目の当たりにするような祝福がある。