ブック・レビュー 21世紀ブックレット32
『喪失が希望に変わるとき』
松木 従子
日本ホーリネス教団 八王子キリスト教会 牧師
喪失体験から人の痛みが本当にわかるように
本書は、喪失からくる苦しみという重いテーマを扱っていますが、喪失をとおして人生の宝物となるものを見出すことができるという希望が語られています。内容としましては、(1)に三人の方による座談会、(2)に四人の方によるメッセージと精神科医の論文が載せられています。
座談会では、福音歌手の森祐理さんと、本書の編者である聖書と精神医療研究会の上山要さん、笹岡靖さんが語っています。その言葉の中に、喪失を味わい、苦しみを体験したからこそ語ることができる優しさ、慰め、励ましなどが満ちています。
愛する者を失ったり、思わぬ病で道が閉ざされるなどの深い挫折を経験したことによって、初めて自分自身に向き合うことができた、また、神さまに向き合い自分自身の存在の意味を確認することができたと言われることに、深い共感を覚えました。
さらに、キリスト者に与えられている課題として、深い悲しみにあった人に対して本当の慰めを与えているだろうか、という問いかけが投げかけられています。
四つのメッセージからは、主による励ましと希望が与えられます。論文には、指導者ギデオンが心病む人を援助する者として示され、心病む人のケアの問題が論じられています。
これらが、家庭集会や小グループなどで用いられたらと思わされました。
私自身、五年四か月前に最愛の夫が召され悲しみのどん底に突き落とされました。けれども、神さまは、喪失によって空いてしまった心の穴をとおして、心を豊かに広げてくださる方であることを実感しています。
主へ信頼が堅くされ、喪失の悲しみにある方々への心の理解が深まっていることに気づかされています。本書をとおして、神さまの恵と大きな慰めと希望をいただきました。