ブック・レビュー It’s Greek to me とならないために
内田和彦
日本福音キリスト教会連合 前橋キリスト教会牧師
四十六年前、大学一年生だった私は、新約聖書を原語で読みたくて、「第三外国語」のひとつ、古典ギリシア語の初級クラスを受講しました。何の準備もないまま、それも事情があって、第二週目からクラスに出席したのですから、無謀な企てでした。テンポの速い説明が理解できず、文字通りIt’s Greek to me(ちんぷんかんぷん)となりました。
そんなわけで、本書を一読して、当時、このような入門書があったら良かったのに、と思いました。動詞を学び始める時点で、活用の全体像がわかります。基本的な単語は、アルファベット順に、使用頻度を示す*印を目安に暗記できます。単語が辞書にどのように出て来るか教えられているので、辞書を初めて引くとき戸惑わないですむでしょう。動詞や名詞で変化する部分には網がかかっているので、判別が容易です。「ほっと一息」というコーナーまであります。ギリシア語に何とかなじんでもらおうとする工夫が随所に見られるのです。
ギリシア語を学び始めると、大きな森に迷い込んだような思いになるものですが、コンパクトな本書では、心配ないでしょう。項目がまとめられているので道に迷いません。例えば分詞。その活用から用法まで、すべてが第17課に収められています。初心者ばかりでなく、復習をする人にも便利です。これ程簡潔でありながら、セム的用法、人名、新約聖書の書名、貨幣、さらには地名の説明まで加えられ、活用表、文献、練習問題の答、基本単語集、聖書索引、事項索引までついてわずか百五十頁足らず。驚きと言うほかありません。
普通なら、そこで終わるところですが、なんと著者は第二部として、新約の重要な言葉の解説まで載せるのです。例えば「悔い改め」では、旧約時代の用法、新約聖書の用法、ルカの用法を概観し、「罪人であるがゆえに」という奨励で結びます。読者は原語で聖書を学ぶことの喜びを覚え、さらに学ぶ意欲をかき立てられることでしょう。