世界一弱いお父さんからのメッセージ 「自然体」の強さ

「自然体」の強さ

 西村家の子どもたちは、よく家に友達を連れて帰ってくるという。

 「子どもの友達が家に遊びに来ます。玄関を入るとすぐにリビングがあり、私がいます。初めての友達は少しビックリした顔をします。

 昼に父親が働きにも行かないで、家にいるのにまずビックリ。

 しかも車いすに座っているのに、またビックリ。(中略)

 私たち家族にとっては当たり前の風景でも、友達にとってはビックリ箱のようなものかもしれません」

 もし自分の家族が病気で車いす生活を余儀なくされていたとして、自分なら友達を連れて帰ってくるだろうか。病人に対する気兼ねもあるだろう。それ以上に、子どもたちは友達と異質であることを極端に嫌う年ごろである。

西村さん一家
西村さん一家
介護してもらっての食事も当たり前の日常の一コマになった

 しかし西村家の子どもたちには、そんな雰囲気はまったくと言っていいほどない。たとえて言うなら、一人ひとりの顔かたちや性格が違うのと同じような「違い」として、父親の病気を受け止めているのではないだろうか。そこにあるのは「ふりしぼった力を合わせ、歯を食いしばって、難病と闘い続ける家族」の姿では決してない。病気をも家族を構成する要素の一つととらえ、特別視しない、そんな「自然体」の強さ。

 今春、小学校を卒業した長女・佳奈ちゃんが、卒業式の後、両親に手渡した花束に添えられていた手紙には、こう書かれていたという。

 「お父さん、障がいを抱えているのに、障がいを感じさせない接し方をしてくれてありがとう」