世界一弱いお父さんからのメッセージ 止揚くんの成長とともに
止揚くんの成長とともに
西村さんの発病から二年後、雅代さんは四人目の子どもを妊娠。やがて生まれてきた三男は、ダウン症だった。西村さんは「止揚(しよう)」という名前を付けた。「矛盾を乗り越えて、さらに高い次元に進む」という哲学用語である。その名前には「ハンディを乗り越えて、より豊かな人生を過ごしてほしい」という西村さんの祈りがこめられている。現在、西村さんは、人の二倍も三倍も時間をかけて成長する止揚くんの成長を見守りながら、自らの身体の変化と照らし合わせて、こう記している。
「〈成長と後退〉〈獲得と喪失〉は対立するものと考えていました。でも、改めて日記を読み返すと、私自身の中では対立ではなくて、同心円上のもので、互いに補い合うものと感じているようです」