中間時代を学ぼう! 『中間時代のユダヤ世界』翻訳裏話
井上誠
単立・鶴川キリスト教会牧師
一九八六年渡米する前にウィートン大学院の新約学のコースの講義要録を見ていた私の目に一つの講義名が飛び込んで来ました。それが本書の原題にもなっている “Jewish Backgrounds of the New Testament” でした。
聖書の背景的学びの必要性を感じていたのと、背景の理解があれば、より良い理解ができると思っていた私は迷うことなく著者J・スコット師によるその学びを受講しました。
数年後、再度渡米した際に、それが出版されているのを大学のブックストアで発見した私は、その足で師の研究室を訪れ、翻訳する許可をいただき、出版社からも、まもなく翻訳の許可の手紙が届きました。
原書は三五十頁超ですが、私はつらいと思ったときは全くありませんでした。この本の必要性を感じていたからです。そして、いのちのことば社のスタッフがこの本の価値を見出してくださって、出版の運びとなりました。
この本は聖書を学ぶ際にも、解釈するうえでも、そして説教を準備するうえでも大いに役立つと確信しています。
新約聖書は旧約聖書の光によって読むという姿勢はもちろん、これからも不変ですが、新約聖書を読んでいて例えば「パリサイ人って旧約聖書に出てこないけど……?」という疑問を持たれた方も多いのではないかと思います。
実は今も敬虔なユダヤ教徒たちが大切にする書物にそのパリサイ人のルーツともいうべき文書があるのです。
そこには「律法に垣根を設けよ」と記されています。律法を犯さないためには、もう一つその外側に規定を設けて、それさえ犯さなければ、さらに内にある律法そのものを犯すことをしないで済むと考えたのです。ここには律法に対する真剣な姿勢が現れているのです。パリサイ人は確かにかたくなになってしまいました。しかし、この文書(「父祖」という文書)を読むことにより、彼らをより多面的にとらえることができるのです。
ユダヤ的背景を学んで得られることには枚挙にいとまがありません。聖書をより理解する一助として、訳者ではありますが、ぜひお読みくださることをお薦めします。
この分野の学びはこれからです。皆さんの興味・関心がさらに深い学びを実現すると期待しています。