今、子どもたちに伝えたいこと
「いのち語り隊」からのメッセージ ◆愛を大きく育てること

「赤ちゃんができる前に、しっかりとした大人になってほしい」と願う永原さんは、「本当に人を愛することができる人に成長してほしい」と、生徒たちに三つのことを呼びかける。一つ目は、「〝自分のことのようにほかの人を大切にすること”。大きい方を弟に譲ったり、友だちのために時間をかけて何かをするなど、一日のうちで、いろんな場面で、どれだけ人のことを思えたかな、と考えて毎日を送ること」
二つ目は「悲しみや喜びを共感することです。人と話していて、その人のつらさを想像して〝つらかったね”と、言ってあげる。想像することはとてもエネルギーを使うけれど、あれこれと想像したうえで、心から『つらかったね』と言ったら、きっと、ほっとしたうれしい顔がかえってきます」
三つ目は「愛は人を元気づけます。元気の出ることばをいっぱい持っておくことです。元気の出ることばをいっぱい言える人は、自分もどんどん元気になって、いのちが輝やいてきます。ことばには、元気の出ることばと、そうじゃないことばがあります。悪いことばは使わないことです」。
〝性やいのち”の大切さだけでなく、生き方についても語ってくれるのが「いのちの教室」の魅力のひとつだ。

◆体験コーナーに挑戦!

講演の後は、四つの体験コーナーの時間。「お産の仕組みと質問コーナー」「妊婦ジャケットコーナー」「新生児・胎児人形抱っこコーナー」、そして「DVDコーナー」では三ミリのいのちから一歳までの生いたちを永原さんが説明する。生徒たちはそれらを、グループごとに体験してゆく。
赤ちゃん抱っこのコーナーでは、胎児から新生児、数か月の乳児など等身大の人形を生徒たちが抱っこしていた。妊婦ジャケットコーナーは、八キロの重さのジャケットを着て即席妊婦さんになってみるというもの。大きなお腹で寝ころんで起き上がったり、しゃがんでみたりと、男子生徒も一緒に妊婦さんの大変さを味わっていた。
あるお母さんは「男の子も将来のためになります。奥さんの大変さがわかっていいですね」と、にこにこ。

◆学ぶことで知る「いのちの大切さ」

最後のまとめで、永原さんは死についても言及した。
自分がクリスチャンであることを前置きして、死を考えることは生を考えることであり、大いなる存在の目を意識して生きていくことなのだと語る。だからこそ、いのちを大切にする生き方をしてほしいと述べる。そのために「自分のいいところを誰かのために役立てること。友達を大切にすること。よかったことさがしをしよう」と、生徒たちを励ました。
また、思春期に入った子どもたちに「自分は愛されている存在である」という自己肯定感を持って生きてほしいと願う永原さんは、自分の電話番号とメールアドレスを知らせて、何かあったら一人で悩まずに、夜中でもいいから連絡してと呼びかけた。
「あなた方は守られているいのち。それを知ってほしい」
参観した保護者からは、「心に染みいる話でした。大事なこととは分かっていますが、家庭で話すことは難しいので、学校できちんとした話が聞けるとありがたいです。毎年この授業を受けることができるようにしてほしい」という感想が聞かれた。

『ティーンズのための
命のことが分かる本』
A5判 1,260 円 永原郁子 著

『お母さんのための
性といのちの子育読本』
B6変 1,260 円 永原郁子 著

◆生徒たちの声

●すべての人が誰かの大切な人
 今日はふだん教えてもらえないようなことをたくさん教えてもらえて、とても良い勉強になったと思います。一番印象に残っているのは、「自分が両親にとって大切な子どもであるように、すべての人が誰かの大切な人であるということ。だから、自分以外の人のことも思いやらなければいけない」という話です。すごくこの話に心打たれました。(小学6年生女子)

●中絶について考えさせられた
 僕がこの講演で一番印象に残った事は、中絶についてでした。小さな命を殺さなければならない、という重い物を背負っていかなければならなくなる。この講演で何度も言われた、「時期を間違ってはならない」「軽はずみな事をしてはいけない」という言葉は、中絶の説明を聞いて、本当にこの二つは守っていかなければならないと強く思いました。(高校生 男子)

◆保護者の声

●適当に返事していたのを反省
 子どもから質問があると適当に返事を返したりしていたのですが、質問にもよるけれども、もう少し耳を傾けなければと思いました。子どもから、私を生んだときしんどかった? って聞かれたことがありました。私は「すごく痛かったし、もうコリゴリやー」なんて、平気で言ってました。少し反省します。(高校生保護者)

●ちゃんとした知識を与えたい
 子どもと話すには少し恥ずかしい話なのですが、話し合おうと思います。最近では子どもとテレビを見ていても、どう反応すればいいかなと思う場面も多く、小五の娘に、「知ってるの?」と聞くと、「セックス?知ってるよ」との答えに驚きました。情報が多すぎるから、余計にちゃんとした知識を与えてあげないといけないなと思いました。(中3の息子と小5の娘の保護者)