今年のクリスマス これがオススメ! 忙しすぎたクリスマスにいやしをもたらした一冊

荒井恵理也
Hi-b.a.スタッフ

イエス様から心離れたクリスマス

 その日は朝から奉仕がありました。それは内側からあふれ出る思いからではなく、かといって義務感を抑えながらでもなく、あまりにも日常化しすぎた、いわば仕事です。職場に向かうのと同じように朝の目覚ましで起こされて、思考することもなく身に付いた動作で身支度を整えて家を出ました。

 別々の場所でいくつかのクリスマス集会の打ち合わせと買い物に追われました。イエス様の誕生日などすっかり通り越して、心は新年の準備にまで向いていましたが、イブ礼拝に向かうために、家に着くと玄関を開けることもなく車に乗り込みました。「飛ばせば間に合う!」と焦っていた私の目に飛び込んできたのは渋滞情報です。通常十五分もあれば着くところが六十分の表示。動かない車の列にしびれを切らして、大して土地勘もないところで一か八か裏道に入りますが案の定……。やることすべてがうまくいきません。教会に到着すると和やかなティータイムの横で、すでにイブ礼拝の片づけが行われていたのです。

生活にも人生にも焦っていた心に一冊の本がゆとりをもたらす

 ゆとりなく心貧しくなった自分に気づくこともなくクリスマスを過ごしていたある時、『クリスマスの祈り』という本を手にしました。寸暇を惜しんでいたはずが、不思議とページをめくっていたのです。ひとページにわずかなことばだけが書かれている、その空間的ゆとりが精神的ゆとりを失っていた私の心を捉え、いやしをもたらしたのかもしれません。

 成功したい、結果を残したい、認められたいと思って自らを駆り立てていた頃でした。豊かさを誇示するかのような華やかなクリスマスに、わかってはいてもいつの間にかのみこまれていた私の心を、そのことばが本来のクリスマスへと引き戻したのです。

 広いページにそっと置かれるようにして書かれていたこのことば、それを目にした時の安心感はつい昨日のことのように思い出します。それ以来、なにかにつけ思い出すのがこのことばです。

 ――そこで男は考えた。「ほんとうの豊かさとは お金のあるなしに よらないのだろう。」

★『クリスマスの祈り』
(ブライアン・モーガン著/セルジオ・マルティネス絵/斎藤登志子訳/いのちのことば社/1,260円)