四季の庭から 9 天の恵み

天の恵み
森住 ゆき
日本福音キリスト教会連合 前橋キリスト教会会員

 路線バスを使って保育園に通っていた。バス停まで祖母の付き添いがあったが、一人の日もあり、思えば平和な時代だった。行き帰りの天敵は田舎道の野良犬と夏の蛇だ。蛇は道の真ん中に長々と伸びていたり、草むらから突然足もとに現れたりして、6歳児は再三寿命が縮む思いであった。野良犬にはよく追いかけられたので、今でも犬は苦手だ。でも後に陸上選手になったとき、命がけで走った恐怖の記憶がすごく役に立った。というのはうそです、もちろん。あはは。

 道の途中に切り通しの長い坂道があった。傍らの斜面の夏草や低木が生い茂る中に、赤い小さな実を結ぶ野生の木いちごがあった。それはまったく私だけのもので、朝な夕な、熟したものから順に私に食べ尽くされていった。とても甘く、幸せな味だった記憶が残っている。一昨年の夏休み小学生の娘と散歩中にその実を見つけ、さっそくその場で口に入れてみたがその時は、そう甘いとも美味しいとも思えなかったのが不思議だったが。

 話は唐突に変わる。私の聖書には、よく傍線が引かれている。しっかりと心に刻みたいと願った箇所なのだろう。でも「なぜここに傍線が」と、よくわからなくなってしまったのもけっこうある。それと木いちごと何の関係が、と問われればうまく説明できない。でも、そんな傍線を見つめていると、その日その時、間違いなく主は私に触れてくださったのだという感謝がじんわりと湧いてきてとてもあたたかいのだ。