天使のパレット コーヒーショップ
相馬幸恵
片柳福音自由教会会員
高校生のころ、小さなパン屋さんでアルバイトをしていました。焼きたてのパンをお店に並べたり、きれいなケーキを箱につめて売ったりと、とても楽しかったのを思い出します。そのパン屋さんの奥に、小さなコーヒーショップがあって、忙しくなると、ときどきお手伝いに呼ばれました。大きなコーヒーメーカーでたっぷりコーヒーを入れたり、ひとかかえもあるようなボールで生クリームを泡立てたりという簡単なものでしたが、高校生の私にとっては、魅力的な仕事でした。
その店は、商店街の一角にありましたので、お客さんのほとんどがオーナーとおしゃべりをしに来る近所の常連の人たちでした。そんな中で、今でも私の心の中に残っているのは、夕方、毎日のように1人でコーヒーを飲みに来ていた年配のご婦人です。誰かと話すこともなく静かにわずかのときを過ごし、帰っていかれるのです。きっとその時間がその方にとっては大切な憩いのひとときだったのかもしれません。
私もコーヒーショップが持てたらいいなあ、なんて思ったのもそのころでした。何も話さなくても、心を込めて入れたおいしいコーヒーとホッする場を提供できたらいいなあと。
一人で静かに心を休め、神様のことを思いめぐらせることのできるときと場所をプレゼントできたらいいのにと、今あの人、この人のことを思い浮かべています。
コーヒーポットのおうちの中は……、いつの日かお見せできるでしょうか?