子どもたちに今! 伝えたい
「性といのち」の大切さ… 第15回 障害を持ったいのちと堕胎

永原郁子
マナ助産院院長

この度、妹が第二子を妊娠しました。しかし、初期段階で出血し、流産が危ぶまれ、出血を止める薬を医師に処方され、安静にしていたら出血は止まりましたが、次の検査で胎児に浮腫が見られ、病気や障害の可能性があるかもしれず、最悪、心臓が止まって死んでしまうと言われたそうです。染色体異常などを調べる検査をして、その結果、病気や障害があるようなら堕胎すると、泣きながら妹は、姉の私に話してくれました。妹はクリスチャンではありません。私はクリスチャンですが、長年、難病に悩まされ、遺伝するのを恐れて結婚や出産は諦めていましたので、まさか妹が私の最も恐れていた試練に遭うとは夢にも思わず、大変ショックを受け、何もことばが出ませんでした。
妹の子どもに重い病気や、出産の危険があるかもしれないと聞いたとき、つらい思いをするかもしれないのなら、生まない方がよいのではないかと、堕胎に強く反対できないでいる自分自身の思いに気づき、心がひどく割れてしまい、深く葛藤しました。目に見えないものを信じる信仰者にとっては、たとえ、まだ胎児としての形になっていなくても、いのちが存在し、心音が確認されている限り、生きているのであって、堕胎は殺人になるのではないかと思うと、私は信仰を捨てなければならず、クリスチャンとして人生を歩んでゆけないと思い、大変落ち込みました。空しさに押しつぶされそうになり、大きな挫折を感じました。妹たちは、病気や障害がある子どもを育ててゆく自信がないと言い、冷たいようだが堕胎もやむを得ないと考えているようですが、やはり堕胎は、神さまの目から見れば、いかなる事情があっても罪にあたる行為なのでしょうか。私自身、病気がちな人生に救いを求めて信仰に導かれましたが、もしも、両親や家族に信仰がなく、重い病気や障害を持って生まれてきたら、なぜ自分は生まれたのかなどと人生に深く悩んだとき、大変、苦しむのではないかという恐れや葛藤もあります。どのように受け止めたらよいのでしょうか。(なぜなぜはてな)

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妹さんご夫婦に与えられた新しい小さないのち、ハンディーを抱えている可能性のあるか弱いいのち。そのいのちにまず「よく来たね」と言ってあげることから始めませんか。「私たちの所に来てくれてありがとう」と、小さないのちを受け入れてあげましょうよ。だれにも顧みられないいのちはかわいそうすぎますものね。
そして、あなたの心が割れそうになるほど葛藤されている二つの選択について考えてみましょう。
第一の選択は、この赤ちゃんに与えられたいのちの時間がどれほどかは分かりませんが、その時間をともに過ごす道。すなわちお腹の中で育み、産み、育てることですね。ただし、妹さんの体に危険が伴うときは慎重に考えなくてはなりません。そうでなくても、このいのちを育てることの難しさをご自分の経験などから深く感じておられることは、文面から察することができます。
第二の選択はいのちを神にお返しする道。「胎児の形になっていなくても」とありますが、厳しいようですが、おそらく小さいとはいえ、すでに赤ちゃんとして形造られています。書いておられるように、鼓動を打って生きようとしているいのちです。このいのちを堕胎(人工妊娠中絶)せざるを得ないと考える選択。法的にはこの時期の堕胎は罪ではありませんが、神が与えてくださった十戒には「殺してはならない」と書かれており、胎児であってもいのちを絶つことはたしかに罪です。私たちクリスチャンは神のみ前に罪を犯さないで生きることが求められています。しかし、そうできなかった時には十字架のみ下にひれ伏し、罪を赦して頂く道が与えられていることもお伝えしたいのです。「冷たい心」で堕胎するのではなく、「神さまから授かった大切ないのちですが、育てることができません。神さま赦してください」と、温かい涙の祈りを捧げましょう。そして、「私の小さないのちを、神さまよろしくお願いします」と祈ることで母の愛を届けましょうよ。
このことを通して、妹さんご夫婦が神の愛を知ることがなにより大切なのではないかと思います。神は私たちの弱さをよくご存じで、十字架の贖いを信じる者を赦してくださると聖書に書いてありますから。そして、第一の選択をされたときには、神は妹さんご夫婦に、大きな恵みを用意されているということも伝えられてはどうでしょう。これらを伝えた上で、妹さんご夫婦が選択されたことを全力で支えてあげてください。「わたしもあなたを罪に定めない」(ヨハネ8・11)。主イエスのこのことばをいただいて、赦され、愛されていることを喜んで生きていきましょう。
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