子どもたちに今! 伝えたい
「性といのち」の大切さ… 第4回 セックスをどう伝えるか

永原郁子
マナ助産院院長

 性教育開始の時期
保護者対象の講演で「性教育を始める時期」について質問を受けることがあります。私は二歳から四歳頃ではないかと答えます。「ぞうさんのお鼻はなぜ長いの」という質問と同じ目線で「赤ちゃんはどこから生まれるの」とか「赤ちゃんはどうやって生まれるの」と聞いてきた時が性教育のチャンスなのです。ですから、性教育の最初の先生はお母さんということになります。興味本位な性情報が入ってくるとこのたぐいの質問はしてこなくなります。もしお子さんからこのような質問を受けたときには、こんな素敵な話をわが子に伝えることができることをまず喜んでください。「それはとても素敵なお話なのよ」とか「聞いてくれてうれしいわ」という風に。そう言っている間に少なからず押し寄せる動揺も抑えることができます。そして、性の大切さや素晴らしさを話してあげてほしいのです。

幼児期~小学低学年に性の大切さ伝える方法

答え方にはポイントがあります。まず赤ちゃんの元がある場所を説明します。男の人が持っている赤ちゃんの元はペニス(おちんちん)の横にある袋の中に、そして女の人が持っている赤ちゃんの元は、おしっこの出る所とうんちの出る所の間に赤ちゃんの通り道があり、その奥にある赤ちゃんのお部屋の横にある袋の中にあると説明します。この赤ちゃんの元がある部分と赤ちゃんを育てるためのおっぱいは特別に大切な所なので、汚い手で触ったり、人に見せたりしてはいけないのだとプライベートゾーンの大切さを教えてあげてください。この部分に触れられたり、また見せられたりしたら「いやだ!」と大きな声で叫んで逃げるよう性被害の防止についてもつなげて話すこともできます。もしそのようなことがあったら、必ず大人の人に教えるようにということも付け加えてください。そして、子どもからこのような報告を受けた時は決して怒らず、根堀り葉掘り聞かず、怖かった気持ちに共感し、教えてくれたことをほめ、そして状況によってはしかるべき対処をして再発防止に努めてください。
次にいのちの元がどのようにして出会うのかというセックスについての説明ですが、「男の人が持っている赤ちゃんの元は空気に触れても水に触れても弱いので、ペニスを使って大切に、赤ちゃんの通り道を使って女の人の持っている赤ちゃんの元に近づけて送り込む」というような表現が語りやすいのではないかと思います。そして「赤ちゃんが生まれる可能性があるとても大切なことだから、簡単にしてはいけない」ということも教えたいのです。

小学高学年~高校生に性の大切さを伝える方法

二次性徴を迎えた子どもたちにとって、セックスについて学ぶことは特に大切なことです。現代の日本の子どもたちは「未婚であっても、学生であってもセックスしてもいい」という情報の中で成長します。ドラマやトーク番組、子どもたちの読む漫画や小説を見てもそのような情報があふれています。
しかし、結婚するまで(生まれてくるいのちに対して責任を持つことができるまで)セックスしてはいけない、と語る大人は子どもたちの周りにはほとんどいません。もしそのような言葉を発しようものなら、古い人間とバカにされる始末です。確かにセックスはいのちを産みだすための行為だけではなく、最高の愛の表現ですし、本能的な喜びとして人間に与えられているものです。しかしセックスがいのちを産みだす可能性のある行為であるということを、子どもたちはあまりにもわかっていないのです。
私は子どもたちに、赤ちゃんを育てるには収入が必要であることや、心の準備、環境を整える必要があることを具体的に説明したり、何よりもパートナーを愛し、子どもを愛することができるように愛の心を育てることが大切だと話します。そして子どもたちに「簡単にセックスしてもいい」という情報に出会ったら「違うよ。それは間違いだ。だって私たち(僕たち)は赤ちゃんを育てる準備ができていないじゃないか」という言葉を発信してほしいと私サイドに引き込むように話します。そして「古いといわれる“NO SEX”の生き方が、実は今一番新しくて、格好よくて、賢い生き方」と、セックスに対する考え方をリフレームすることで、子どもたちの思考や行動の変容を図りたいと考えています。
「性」は本来神の祝福です。私たち大人がまず祝福される性のあり方を見直し、知恵を絞って子どもたちに正しく伝えていきたいと思うのです。

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