子どもたちに今! 伝えたい
「性といのち」の大切さ… 第8回 人工中絶をした友人

永原郁子
マナ助産院院長

二十四歳の友人が、性格的にも経済面でも別れを考えていた彼氏との間に子どもができていることがわかりました。「子どもも愛のない家庭に生まれてきたくないだろうし、私も子どものために好きでもない人と結婚できない。かといって、子どもの幸せを考えると、一人で育てたり、里子に出したりはしたくない」と、彼女は中絶して別れました。先生なら、クリスチャンとしてそのような友人にどう声をかけますか。(栃木県M・S)

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彼女はあなたという友達がいて、本当に良かったと思います。心の支えになってあげてくださいね。彼女が経験したことは言いつくせない悔しさであり、苦しみであり、悲しみです。それは、関係をもった人が結婚を考えることのできない相手であったことや、避妊をしていなかったこと。また別れを考えていたときの妊娠だったことなどを想像すると、きっと自分を責め、心の中は悔しさでいっぱいだと思います。また、生理がなかなか来ないときの焦り、産婦人科のドアを開けるときのつらさ、この妊娠を受け止めざるを得なかったこと、中絶手術の痛みと屈辱感、彼との関係の清算など一つひとつがどれほど苦痛だったことでしょう。
そして超音波に映った赤ちゃんは、元気に心臓を動かしていたことでしょうね。自分の体に宿ったそのいのちが、もうこの世に存在しないということの悲しみ。それは体が悲しんでいるのです。
そのような悔しさ、苦しみ、悲しさをしっかりとあなたが受け止めてあげてください。「本当につらかったね」「よく耐えたね」「打ち明けてくれてありがとう」と、心から言ってあげてほしいのです。もし友達が涙を流すとしたら、その涙が止まるまで、気持ちに寄り添いながらそばで肩を抱いてあげてください。
もし心が通い、話ができる状態であれば、赤ちゃんに謝ることを勧められたらどうでしょう。「赤ちゃんごめんね。せっかく私の所に来てくれた『大切ないのち』なのに、育ててあげることができなかった」と。小さないのちを「大切ないのち」と表現することで、小さないのちの尊厳が守られます。それは自分自身のいのちの尊厳が守られることなのです。小さないのちを粗末に扱ったり、自分にとって都合の悪いことは消し去るしか仕方ないと思うことは、自分のいのちを大切にできないことにつながりかねません。
またクリスチャンのあなただからこそできる素晴らしいことがあります。それは、友達を悔い改めの祈りに導くことです。「愛する天のお父様、御許に行った小さないのちをあなたの御手の中でどうか守ってください。そして私の大切な友人の苦しみをあなたはご存じです。私たちの罪のすべてを十字架の上で贖ってくださったイエス様は、私の友人のこの罪のためにも十字架に架かってくださったことを信じます。友人の苦しみをあなたの愛で取り去ってください。主イエスの御名によって、アーメン」このようなとりなしの祈りを主はきっとお聞きくださるでしょう。この祈りに友達もきっと心を合わせてくれると思いますよ。
そして、いずれ私たちもいのちが終わって天国に行くときが来ます。もし中絶した赤ちゃんと出会うことがあったとしたら、「お母さんは、あなたのことを産んであげられなかったけど、お母さんはあれから一生懸命生きてきたよ」と言ってあげることができるような人生にしようと言ってあげてください。人生の中で大きな傷を背負ってしまったことは消すことはできませんが、この経験があったからこそ与えられる人生があると思うのです。そのような人生を築く手伝いをあなたならできるのではないでしょうか。
ヨハネの福音書八章には、姦淫の女性がイエス様の所に連れてこられたときのことが書かれています。イエス様は、「あなたがたのうちで罪のない者が、最初に彼女に石を投げなさい」と言われました。それを聞いた者は年長者から始まって、みんな立ち去ってしまいます。最後にイエス様は、「わたしもあなたを罪に定めない。行きなさい。今からは決して罪を犯してはなりません」とおっしゃいます。
あなたの友達を責めることはだれもできないことを教えてあげてください。そして、イエス様に心から謝ることで赦していただけることも教えてあげてください。
箴言二七章に、「香油と香料は心を喜ばせ、友の慰めはたましいを力づける」と書かれています。あなたの優しさが、キリストの香りとなって友達に届きますようにお祈りします。

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