子どもと一緒に育とう ■周りの人々の支えが必要
村上純子
臨床心理士
「子どもと一緒に育とう」
とてもいいことばですね。でもこれは、子育て中の親だけに向けられているとは思わないでください。「今月の特集は〝子育て”か。自分には関係ないな」。そう思った方、読み飛ばさないでいただきたいのです。
実は、今子育てをしていない方々にこそ、この特集を読んでいただきたいのです。子どもと、その子どもを直接育てている両親だけでなく、その両親を支えている周りの人々も、みんなが育っていく必要があるのではないかと思うからです。
親にとって、子育ては初めてのこと、慣れないことの連続です。今までの経験や考え方が通用しないことも多く、とまどうこともよくあるし、そのたびに不安になったり、落ち込んだりします。でもそれは当たり前のことで、親として、子どもと一緒に育っていけばそれでいいのだと思います。
では子育ては、親たちだけがやっていればいいのでしょうか。
日本社会は、核家族化の時代といわれて久しいですが、昔のように何世帯もが一緒に生活し、子育てを手助けする時代ではなくなりました。一方で、育児書、テレビ、インターネットなど、様々な育児情報があふれています。情報は役立つこともありますが、逆に不安をあおることもあります。内容が一致していないことも少なくありません。そんな中で新米の親たちが混乱するのは当然のことで、だからこそ、周りの人の支えが必要なのです。それを象徴するのが、「献児式」だと思います。教会によって名称や内容は多少異なるでしょうが、基本的には両親が「神さまから授かった子を聖書の教えに基づいて育てます」と誓う式で、そのとき、教会の会衆に対しても、その夫婦が良い子育てができるように支えることが問われます。
子どもは夫婦に与えられるものですが、教会というコミュニティーに与えられるものでもあります。ですから、教会の子どもたちがすくすくと育つように手助けすることは、私たちに与えられた責任なのです。
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本を二冊ご紹介したいと思います。これらの本は、子育て中の親たちはもちろん、その周りにいる人たち、そしてこれから親になろうとしている方々、いつか親になるであろう方々にも読んでいただきたいものです。
一冊目、『ゆっくり育て子どもたち』は、小児科医の鍋谷まこと先生が書かれた本です。先生は発達相談室で勤務された経験などから、「個性豊かな子への七か条」をまとめておられますが、「子どもの世界を大切にする」「信頼関係を築く」「理屈よりも体験が必要」「しかる回数よりもほめる回数を増やす」といった原則は、結局、どんな子どもにも当てはまるものです。
私たちが子どもたちに接するときにも心得ておくと良い、大切なものだと思います。また、本の後半は「すべての親に伝えたいこと」として、子育てのヒント、子育ての悩み別アドバイスが書かれており、どれもそうだなとうなずくことばかりです。子育ての真っ最中だと、なかなかそれがわからないもの。ですから、このような客観的な目が必要なのだと思います。
二冊目の『発達障害とその子「らしさ」』は、児童精神科医の田中哲先生が書かれた本で、発達障害をどう理解したらいいのか、簡潔にわかりやすく述べられています。しかし、この本の素晴らしさはその深い内容だけでなく、田中先生の持っておられる温かいまなざしです。先生は、子どもたちの伸びる力、生きる力、大きくなっていく力を「子ども力」と呼び、その力を信じて子どもたちを見守っておられます。その基には、発達障害を持つ子どもたちだけではなく、すべての子どもたちが生きやすい社会になってほしいという先生の願いがあります。
「育てにくい子」は確かにいます。でも、こんなふうに理解して支えてくれる周りの人がいれば、親が一人で抱え込まずに、もう少しゆったりと子育てができるだろうなと思うのです。
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生まれたときから「ダメな子」はいません。どの子も神さまに愛されて、素晴らしい賜物を持って生まれてきています。でもその子が、自分らしく輝いて生きることができるようにするのは、大人の責任です。それは重い責任でもありますが、喜びでもあります。
子どもたちは本当に素直で、心からその子を思いやった愛情が与えられれば与えられるほど、グングン育ちます。その成長ぶりには驚かされますし、とても大きな喜びを感じます。
神さまから与えられている大切な宝物を見守り、様々なかたちでその成長に関わることができる喜びを一緒に味わいませんか。