小さないのちが教えてくれたこと ◆出産をサポートする働き

水谷潔氏
小さないのちを守る会 代表

「小さないのちを守る会」は、出産のサポートや養子縁組など、中絶防止の働きを行うボランティア団体。代表の水谷潔氏は、「主にホームページからのメールで何度かやりとりをしてから、電話でお話ししたり、お会いしたりしています。直接本人が連絡してくる場合には、産みたいという意志がある人が多いですね。産みたいけれど、周囲、特に親や夫が中絶と言うのです。どういう援助ができるかを伝えます」と語る。
相談は、妊娠した本人から直接の場合もあれば、クリチャンであるその家族や友人からの場合も。牧師、クリスチャンの医療人、学校カウンセラーなど、公の立場をもつ人が間に入って連絡してくることもある。三年前からは、若い人に届くようにと、ケータイからもホームページが見られるようにした。
中絶というと、十代や未婚者女性に多いように思われているが、実際には既婚者の中絶の多さが、従来からの日本独自の特徴だという。「日本では、夫婦間で『もう子どもはいらない』と、経済面や年齢的な理由によって中絶するケースが多いです。また最近は、不倫相手の子どもを妊娠する三十代の既婚者女性も増えています」
出産を反対されている人は援助を必要としている。また、中絶を考えている人は、それしか考えられなくなっている。そのため、「離婚するというのは脅しで、実際はそんなことないですよ。よくご主人と話し合ってみては」「生活に不安があっても、いざ産まれれば頑張ろうと思うし、行政の支援もありますよ」などと一つひとつ不安に答え、出産の可能性を探っていく。大抵は、女性に産む意志があれば通るそうだ。会の援助内容の中でよく尋ねられるのは、出産前のホームステイ。大きなお腹で地元にいることを避けたいという人に、クリスチャン家庭のホームステイ先を紹介する働きで、期間は出産ひと月前から数か月など。各人のケースに合わせて、産婦人科や行政などとも連携をとりながらサポートしている。また最近では、シングルマザーとして出産を決意する女性も多い。
「本人からの連絡の場合は、中絶したくないという気持ちが少しでもある人なので、以前はメールのやりとりが始まればほとんどが出産に至りました。だんだんネットが機能して、相談する人たちが多様になってきたため、難しい事例が増えてきています。困難を覚えますが、これまで届かなかった人にも認識され始めているのだと思っています。神様は私たちの忠実さを見ておられるので、できるだけのことをさせていただこうと思っています」