小さないのちが教えてくれたこと ◆産んで後悔する人はいない

水谷潔氏
小さないのちを守る会 代表

「もし、子どものいのちが親のものだったら、生かすも殺すも親の自由。虐待しようが自由ですよね。でも、それは違う。いのちは、神様から与えられたものです。神様という存在を信じないのなら、社会全体のもの、みんなのものと思ってもいい。かけがえのないいのち。間違っても親のものではないから、育てて、自立させて、社会に送り出していくのです」
だが、出産をすすめれば相手の人生に大きな影響を与えてしまうだろう。すると、「基本的に、産んで悪い結果になることはないですからね。それはびっくりするほどです」と、水谷氏。
「例えば、何が悪い結果なのでしょう。何をもって産んでよかった、悪かったと言うのか。産む前も、産んでからも苦労する人はいますよ。母子家庭で育てるのは大変です。じゃあ、産んで後悔しているかと言ったら、後悔しませんからね。『この子を中絶しようとしていたなんて、なんて恐ろしいことを考えていたんだろう』って。大変だけど、産んでよかったと言ってくれます。いのちって、そういうものでしょう」
両親がそろった家庭でなければ幸せになれないわけではない。
「片親家庭の子どもも、養子も幸せになれます。中絶は必要悪として日本のスタンダードになっています。養子は不幸だというイメージも強い。でも、幸せな人たちは表に出てこないだけで、たくさんいます」子どもを養子に出すことも、「責任放棄ではありません。立派にいのちを生み出したのです。胸を張ってほしいと思います。子の幸せを願って祈ってあげること。そして、産みの母として、その子に胸を張れる人生を生きようね、と声をかけます」
会へ連絡をくれるのは、出産希望者や中絶にためらいのある人。中絶は当然と考えている人たちには届いていないのが現状だ。だからこそ、「身近なクリスチャンが話を聞いてあげてほしい。私たちに相談や連絡をくださってもいいです。できる限り力になりますから」と願う。
「いのちは大事だと言うけれど、自分に価値がないという人たちが日本には大勢います。産まれてよかった、意味があるんだよ、それを大人がどれだけ伝えられているのかと思います」
小さないのちの価値を認めることは、自分のいのちを肯定することでもあるのかもしれない。

※厚生労働省の統計によれば、2009年の出産数は108万に対し、人工妊娠中絶は22万2405件。
※1955年には、過去最高となる中絶数、約117万件。その後も、高い中絶数が報告され続けた。
※収容所……1976年から、2年9か月のあいだに2万人近くが収容されたと言われるが、生還できたのはわずか8名だという。

 

小さないのちが教えてくれたこと ◆死ぬことが決定づけられている場所