往復メール kei Vol.1 自己紹介&ゴスペル

那須 敬
国際基督教大学 社会科学科助教授(西洋史) JECA 西堀キリスト福音教会会員

 こんにちは。あたらしくこの連載をshioyaと二人で担当させていただき、感謝です。僕は現在、大学教員として働いていますが、長いことshioyaがゴスペルを歌うときにピアノを弾かせてもらってきました。第一回目は自己紹介ということで、僕にとってのゴスペルについてお話しします。

 思えば大学一年の春、薄汚れた音楽サークルの部室の扉を開けると、ひょろっとした長髪の男がひとりピアノ椅子に座り、ギターを弾きながらブルースを歌っていました。「この曲知ってる?」それがshioyaとの音楽活動の始まりでした。その当時から、ソウルやレゲエを歌う彼の声には不思議に人の心を動かすものがありましたが、何よりもゴスペルやスピリチュアル(黒人霊歌)を歌うときには、歌っている本人にもピアノを弾いている僕にも説明できないような途方もないパワーがみなぎっていました。神さまに祈るときと同じ魂の震えを感じた僕は、「これはすごいことになるぞ……」と思ったのです。

 その後、僕は研究を続けるためにバンドを離れましたが、今度はshioyaが教会の扉を開くことになりました。音楽の中に姿を現してくださった神さまの不思議な取り計らいでした。昨年、初めて二人でCDを録音することができましたが、ゴスペルを演奏するときの叫び出したくなるような喜びは、学生時代のそれと変わっていません。

 ふだん自分のことばかり考えている僕たちの生活の中に入り語りかけてくる神さまの方法は不思議です。心が揺さぶられ、それまでの自分の思い悩みがちっぽけなものになってしまうような瞬間。僕にとってゴスペルを演奏しているときがそうなのですが、そういうときには、ちょうど暗い雲の間から、遠く高いところに青空が見えるように、すべてがクリアになり、黙っていられなくなります。ダビデなど聖書の人々は喜んだり、驚いたりするときによく「主は生きておられる」と叫びますよね。この叫びこそゴスペルだ、と僕は思うのです。