愛しきことば 1 愛しきことば
松田 圭子
2016年、月に1度、水彩画とカリグラフィーによる表紙でお届けいたします。カリグラフィーとは、ギリシャ語で“美しい書きもの”という意味で、アルファベットの文字を手書きで美しく表現していく西洋書道のことです。
この文字を用いて、日頃祈りのことば、みことば、また心にとまった詩や何気ないことばを絵とともに作品にし、年に2回ほど作品展を開いています。10年前から始めた展示ですが、作品を制作し始めた当初は、絵もなく、とにかく「めざせ、パソコンの文字!」という具合に美しく整った文字を書くことに始終していました。しかし、馴染みのないカリグラフィーは、見てくださるほとんどの方が、“きれいね”の一言で終わってしまい、どんなに頑張っても空虚感だけが残る納得のいくものではありませんでした。
そんな頃、植物を描いた水彩画とカリグラフィーの組み合わせの作品を展示してみたところ、感想は、水彩画や文字に対することではなく、ことばにどう感動したかでした。また同じ頃、“娘に贈ることば”という制作依頼から、ことばの重要性に気づかされ、それからことば探しにはかなりの時間を費やすようになりました。
今回、この初回には、どうしてもこのことばで書きたいと決めていたことばがあります。それは、ヨハネの福音書の始めにある「初めにことばがあった」です。意味としては大きくつかみどころがない感じもしますが、堅固な土台であることには違いありません。私たちは困難にぶつかると聖書のことばから知恵を頂き、励まされ、勇気づけられ、乗り越えられる力を受け取っています。それゆえ、このことばから1年を始めたかったのです。
絵にした教会はフランスの小さな集落、ドン・レミにあるサン・レミ教会です。ジャンヌ・ダルクが洗礼を受けたという教会です。やはり、このことばとの組み合わせは、石造りの小さな教会でと考えていました。教会の写真資料では大聖堂が多く、昔から村にあるような小さな教会を描くには、自分の足で行ってみるしかないようです。いつの日か、ことば探しと小さな教会を訪ねる旅ができたらと思っています。