時代を見る目 136 ひとりで生きる智恵(3) 戦え、独身者
安藤理恵子
キリスト者学生会主事
現代日本、特に都会生活では、独身で生きることがより便利になっている。二十四時間稼動する社会体制、隙間のない多忙な毎日。ひとりのほうがかえって身軽だ。好きなもの観て、食べて、寝て。一緒に楽しめる仲間がいれば上等。この世は言う。「独身生活は気楽で自由だ!」そのとおり。しかしキリスト者は、そんな理由で独身生活を喜んでいてはならない。
独身状態をパウロが奨励しているのは、独身者が気楽に人生を歩むためではない。彼は、それどころではないこの時代の現実を見ていた。人類が神を捨ててわがままに殺しあう悲惨さ。教会で健全な教えがゆがめられる地獄。キリストの来臨を真に受けない主の民が当然のごとく力を失う愚かさ。そして終わりの日は近づく。目を開けば熾烈な戦いがそこにある。この状況下で、神にのみ仕えるライフスタイルを整理し実践できるのは独身者の特権だとパウロは理解していた。与えられた時間と財産の自由を、自分の名声や道楽のために使ってはならない。自己投資に明け暮れる日々はむしろあなたを貧しくし、焦りを助長するだろう。心底満たされたいと思うなら、キリストにならい、自己犠牲に生きなさい。快適で自己中心な生活から外に出て、あなたを困惑させる人々とのかかわりを通して神に仕えなさい。あなたの人生が人々に邪魔され、切り取られていくとき、あなたは自分が確かにキリストの弟子であるとわかって、深い天上の充足を感じるだろう。
足元をすくわれないために、あなたの娯楽の内容を吟味しなさい。独身者にセックスは許されていない。それがわかっていながら欲求を刺激するものを見聞きするのは愚かだ。結婚しても性欲を野放しにすることは許されない。セックスは相手の人格に献身する交わりだ。自分の都合だけで行うセックスは、神の意図したものではない。この真理を見失わせる物や人から遠ざかりなさい。生活のすべての次元をキリストの影響下に置きなさい。隠してきた寂しさや欲求不満をえぐりだしてキリストに見せなさい。そして信じなさい。キリストによってあなたはこの戦いに勝てるのだ。
独身生活を悩みも葛藤もなく続けられる人はいない。この不安定な今日、保証のない未来。私たちはこれを独身のたまものとして感謝しよう。なぜなら、これこそが私たちを唯一の確実な保証者、毎瞬の不思議な助言者へと導く信仰の入口だからだ。