時代を見る目 169 地域のニーズに応える教会 (1)
地域の必要を知るために

池田恵賜
日本福音キリスト教会連合・本郷台キリスト教会 ユースパスター

 私たちの教会では、毎年ユースを中心として、地域の公会堂を借りて千人近くの人々を集めて演劇を行っている。演劇の内容に福音的なエッセンスは含まれるが、伝道メッセージや招きがあるわけではない。そのことに賛否両論あると思うが、私たちが大切にしているのは若者一人ひとりが、公演を企画運営することによって、自分たちの住んでいる地域に目を留め、人々の必要を知り、主のみこころを実践することだ。ただ演劇を行うことだけが目的ではない。

 イエス様は行動的なお方だ。愛を説くだけでなく、この地に来て実践されたお方。サマリヤの誰からも相手にされない女のところに、神の愛を伝えに、歩かれたお方だ。私たちもイエス様に従う者として、行いをもって愛を表していかなければならない。若者は、何もしないでいると知識に走りやすい。頭の理解だけでみことばを理解し、人を裁いてしまいやすい。だから一人ひとりが、この働きに関わることで、地域の人と関わり、その必要を知り、応えていけるように取り組んでいる。そのため、準備は一年前から始まる。

 まず私たちは、地域に出て行ってプレヤーウォーク(祈りの歩行)をする。主に思いを向け、心を開き街を歩いていると、主は様々なものを見せてくださる。そこから新たな出会いや祈りが生まれる。ホームレスの人に重荷を持つ者や、チンピラにチラシを渡し、脅かされつつも彼のために祈る者もいた。また、ゴミ袋を持ってゴミ拾いをしてくる。普段と違う速度で歩き、違う視点でものを見るときに、違ったものを見させられる。

 祈る地域をあらかじめ調べた若者が資料を配ってくれる。どこに何があり、どんな雰囲気の地区なのかということだけでなく、過去にさかのぼって調べたりもする。特に戦争中、捕虜を虐殺した場所や弾薬を作っていた場所などでは、みんなで集まって悔い改めの祈りをする。各学校や地域の施設に行って祈りもする。その中から近所の養護学校や老人ホームに行こうという声が上がって交流したりもした。

 それまで、そういうことに気を留めなかった若者たちも徐々に変えられてくる。ある日曜日の早朝、大学生だった青年が、教会の坂をビールの空き缶をいくつか持って登ってきた。どうしたのかと聞くと、「道端に捨てられていたので拾ってきました」と、笑顔で答えた。

 そんな地道な働きが認められて、今では区の後援をいただいてクリスマス演劇を行っている。