時代を見る目 224 東日本大震災に思う [2]

木田惠嗣
ふくしまHOPEプロジェクト代表
福島県キリスト教連絡会代表

東京電力の原発事故が起きるおよそ5か月前の2010年10月に、福島県では原発のプルサーマル計画が争点となる県知事選挙が行われた。プルサーマル計画とは、ウラン燃料のみを使用するために設計されている原発で、MOX燃料(ウランとプルトニウムの混合燃料)も使用しようという計画である。
度重なる地元からの受け入れ要請を受け、それまで消極的発言をくり返していた現職の佐藤雄平知事が一転、プルサーマル計画の受け入れを表明した。印象としては、自分の再選が揺るがないことを見定めた上での決定と見えた。
それから2か月後の福島県知事選挙で、佐藤雄平氏はプルサーマル反対を唱える共産党の対立候補者を大差で破り再選した。この県知事選挙の投票率は県政史上最低となる42%であった。地方のどこにでもあるような再選劇であった。しかしその代償は大きかった。

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現在、プルサーマル計画に基づいて3号機に運び込まれた大量のMOX燃料をどのように処理するか、また、事故によってメルト・スルーした核燃料をどのように回収し、原子力発電所を廃炉にするか、その道のりはまだ見えない。どれをとっても気の遠くなるような時間、経費、危険を伴う事業となってしまっている。
震災後、ひとりの教会員が、「あのとき、無力感に捕らわれて、投票権を棄権し、共産党候補にプルサーマル反対の1票を入れなかったことが悔やまれる」と語った。私の心には、彼のことばが今も深く残っている。

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震災後、福島市内の教会による「ふくしま教会復興支援ネットワーク」の会合で、4つのプロジェクトが挙げられた。除染、仮設住宅支援、子ども保養、安全な野菜を届けるというものである。活動を進める中で、その中心は、仮設住宅支援と子ども保養に収束していった。放射能汚染の現場で、最も影響を受けるのは、放射能に対して大人の20倍もの感受性がある子どもたちである。この子どもたちに仕えるのが、私たちに与えられた使命ではないかと思うようになった。
そこで立ち上げたのが、「ふくしまHOPEプロジェクト」である。莫大な必要の前には、焼け石に水のような私たちの働きではある。しかし、その無力感に立ち向かい、いと小さき者のひとりに仕えることもクリスチャンの社会的責任ではないかと考えている。