時代を見る目 232 加害者と生きる社会 [1] ストーカー殺人事件に思うこと
栗原加代美
NPO法人 女性・人権支援センターステップ代表
DV加害者更生プログラム ファシリテーター
2013年10月、三鷹でストーカー殺人事件がおきました。その事件を受けて、TBSテレビの報道特集とNスタで、ストーカー加害者への対策として、オーストラリアの国をあげての取り組み、日本人の催眠療法などとともに、私たちの加害者更生プログラムが紹介されました。取材の日、私たちの「DV加害者更生プログラム」では、三鷹ストーカー殺人事件について、参加者とともにストーカーの心理状態を想像し、考え方や行動をどう変えたら殺人を犯さなくてすんだのかを考えました。
「加害者がパートナーの別れたいという決断を尊重して、受容できていたら、事件は起きなかったのではないか」という意見が出されました。加害者が相手の立場に立てず、自分の思いを通そうとするところに“相手への支配”が考えられます。元妻を切りつけた伊勢原事件の加害者もそうですが、もし私たちの更生プログラムに通っていたのなら、事件は起きなかったのではないか、とも参加者から声があがりました。
また、参加者に10項目のストーカーチェックリストをしていただきましたが、ほとんどの人が5項目以上に丸をつけていました。ストーカーは、DV行為の精神的暴力にあたりますが、この結果は、誰もがストーカーになりうる可能性があることを示しています。その中で、新しく気づかされたことがあります。「愛し方がわからない」という項目があったのですが、参加者全員がこの項目に、ここに来るまではわからなかったと手を上げたのです。
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DV加害者はパートナーから愛されることを求めて暴力を振るい、自らがパートナーを愛することに焦点が当たっていません。そしてここに参加するDV加害者の9割は親から虐待を受けたり、父親から母親へのDVを見てきた方々です。彼らの周りには他人を愛する良いモデルがいなかったのです。
私の周りにもいませんでした。私はイエス・キリストにお会いして、愛するとはどんなことかを知り、キリストという良いモデルに出会いました。
参加者にも、イエス・キリストに出会って愛し方を知っていただき、DVから解放されてほしいと願ってやみません。そのために、先にイエス様から愛されている私がキリストの愛の香りを放つ器として、DV加害者に対して用いられる器にさせていただきたいと祈りつつ、DV加害者更生プログラムに臨んでいます。