時代を見る目 239 考え直そう、日本 [2] 世界をリードする日本の洋上風力技術

牛山 泉
足利工業大学 理事長兼学長

私は大学院でエネルギー変換工学を専攻したが、1973年の石油危機を契機に、燃料を大量に使うガスタービンから、神の息である風を利用するウィンドタービンを中心とする自然エネルギーの研究を行うようになった。

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2013年11月、福島原発の沖合い20キロで、海に浮かぶ浮体式洋上風力発電の実証試験が始まった。発電出力は2,000キロワットであり、その発電電力は海底ケーブルを通じ、世界で初めて洋上設置された変電設備を経由して陸上の変電所に送られる。さらに2014年夏には、世界最大の直径165メートル、出力7,000キロワットの風車2基が増設される。丸紅、日立製作所、三菱重工業、三井造船、新日鉄住金、古河電工など民間の大手企業11社と東京大学が参画する経済産業省の主導による国家プロジェクトである。
洋上風力発電は、これまでに着床式が千葉県銚子沖、北九州沖、また、環境省による浮体式は長崎県五島市沖で実証試験を行っている。このように4か所で着床式と浮体式の実証試験が同時並行で行われているのは世界でも例がない。今後、これら4つの地点で、送電技術の確立や環境影響評価、コスト削減を進め、洋上ウィンドファームの導入促進の段階に進むことになる。福島の小名浜港などが新たな風力発電産業の一大集積地となり、2014年4月には、研究拠点として産業技術総合研究所の福島再生可能エネルギー研究所も郡山に開所し、被災地の復興に向けて大きく前進することになる。

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現在、欧州では英国を筆頭に、洋上風力発電が新たな電力源となりつつあり、英国では2020年までに3,200万キロワットを発電し、国内電力の3分の1を賄う計画であり、原発停止を決めているドイツも、同じ時期に1,000万キロワットの洋上風力発電を見込んでいる。欧州は偏西風帯に位置し、北海が水深50メートル以浅の海域が広く、北海油田の掘削で培った経験を洋上風力発電に生かせることから、浅海域用の着床式洋上風力発電が実用されている。これに対して日本の沿岸部は浅海域が狭く、すぐに深海域になることから、着床式に加えて、技術的には難しさのある浮体式洋上風力発電に積極的に取り組んでおり、わが国の浮体式洋上風力はオールジャパン体制での取り組みにより世界を大きくリードしつつある。