時代を見る目 256 豊かな信仰を目ざして [1] 神さまイメージって?

河村従彦
インマヌエル聖宣神学院院長

「神さまイメージ」って何のことだろう。
初めて聞かれる方もあるかもしれません。簡単に言うと、「キリスト者が神さまをどのようにイメージして、心の中に取り込んでいるか」ということです。ひょんなことからこのテーマに向き合うことになりました。臨床心理を学んだとき、論文のテーマを決めるためにいろいろリサーチをしました。調べていくうちに、「神さまイメージ理論」(God Image Theory)というのがあることを知りました。「へえー、もう40年も前にこんなことをしていた人たちがいたんだ」。驚きをもって、でも、やはりそうだよなという、何とも言えない納得のようなものをもって受け止めました。

*      *      *

神さまイメージ理論は、1970年代のアメリカでファウラー(神学と発達心理学の学者)たちによってさかんに提唱された信仰発達論を追いかけるようにして始まりました。研究が始まってすでに40年以上経ちますが、日本では今もほとんど知られていません。神さまイメージ研究の担い手の中でも有名なのが、アルゼンチンの女性の精神科医アナ=マリア・リズート(Ana-Maria Rizzuto)です。リズートはアメリカに渡って臨床と研究を行い、自分の患者さんへのインタビューから、人間がどのように神さまをイメージするかを『生ける神の誕生(The Birth of the Living God)』という本にまとめました。この本は、神さまイメージ研究では必ず文献リストに入る重要な本になっています。

*      *      *

その後、研究はさまざまな人たちによって続けられ、だんだんといろいろなことが分かってきました。神さまをとても怖い存在だと思っている人もいれば、愛情にあふれた優しい存在だと受け止めている人もいるということ。さらには、神さまの受け止め方の違いによって、自己イメージや対人関係の作り方、ひいては信仰の姿勢にも違いがあるということです。
考えてみれば深刻です。自分が信じている神さまが恐ろしい「えんま様」のような存在であれば、信仰年限が重なれば重なるほど神さまイメージはネガティブになり、聖書が示す神さまの豊かさからますます離れてしまう可能性があるのです。
自分にとって神さまってどのような方だろう。基準に合わないと裁く「カミ」か、赦しと愛にあふれたお方か。少し考えてみませんか。