神様がくれた風景 4 春の小川

春の小川
やまはな のりゆき

 ♪春の小川は さらさら流る 歌の上手よ いとしき子ども♪
♪声をそろへて 小川の歌を うたへうたへと ささやく如く♪
小学校唱歌「春の小川」です。作詞は高野辰之さん。これは3番の歌詞。この歌に3番があったなんてご存じでしたか? 4年生用の唱歌だったものが、3年生用に掲載される際、歌詞が削られてしまったということです。
この歌のモデルとなった川は、原宿~渋谷付近を流れる河骨川。と言ってもそれは過去の話で、東京オリンピックの際に下水道の一部とされ、今ではこの川を見ることはできません。この詞が書かれた明治の頃、河骨川の支流は、春にはメダカやコブナが泳ぎ、岸辺にはレンゲやスミレ、黄色いコウホネが咲くのどかな場所だったとか。子どもがいなかった高野さんは養女を迎え、ずいぶん可愛がり、よく散歩に連れて行っていたそうです。3番の歌詞には、その父と娘の楽しいひとときがうかがえます。もっとも思いを込めたであろうこのフレーズが削られてしまったことは残念ですが、愛しいわが子を見守る父親の温かい眼差しが深く感じられます。
私自身もまだ娘が小さかった頃、よく一緒に散歩に出かけました。童謡を好み、歌うことが大好きな娘の歌声は幾度も私の心を和ませ、時には涙腺をうるませてくれました。先日、彼女と妻と三人で鶴見川の支流を散策に。春にはまだ少し間がある2月の里山でしたが、それでも小川には小さな魚の姿がいくつも光っていました。河骨川もきっとこんな感じだったんだろうな……。春はいのちにあふれる季節。創造主なる神様の栄光を目の当たりにします。私たち一人ひとりもその栄光のいのちの一粒なんだ。
「歌の上手よ いとしき子ども」
きっと神様も、こんな風に私たちを愛の眼差しで見つめてくれている。そんなふうに思えて、歌いながらうれしくなったのです。
参考:池田小百合著『子どもたちに伝えたい日本の童謡 東京』(有楽出版社2003)