神様がくれた風景 8 十五夜の月
やまはな のりゆき
十五夜とは、新月から数えて15日目の夜のこと。旧暦15日の夜であり、満月です。旧暦の秋は7月から9月までとされ、それぞれ、初秋(7月)中秋(8月)晩秋(9月)と呼ばれました。中でも8月15日の月が最も美しいと言われ、よって「中秋の名月」と称されたのです。旧暦の8月15日は、新暦においては、9月中旬から10月の初旬にあたるそうです。
北国北海道では秋の到来は早く、8月のお盆を過ぎれば雲は高くなり、夜にはキリギリスの声と共に秋の空気がスーッと流れ、急に冷え込みます。そんな月夜の記憶を絵にしてみました。
7月号にも父のことを書かせていただきましたが、まぁ、彼も“昭和の父”ですから、お酒好きだったわけです。あの頃の父親たちは飲んで帰るのが男の甲斐性と思っていたのか、そう刷り込まれていたのか。サザエさんを読んでも、昔のホームドラマを思い返しても、折詰を手土産に千鳥足で帰ってくる姿こそが日本の正しいお父さんであり、父親の“型”でした。
「お父さん遅いねぇ……」父の帰りを待ち、不安気にため息をこぼす母。一緒に入るお風呂の窓からは、中秋の月が覗いていました。
さびしそうな母を見て、ぼくは子どもなりに「大人になったら、お酒も飲まないし、タバコも吸わない。仕事が終わったらまっすぐ家に帰ってくる、そういうお父さんになるんだ!」そう固く月に誓ったのです。
ところがその後、その誓いはもろくも破られ、酒、タバコ、夜遊びに興じる悪漢になってしまったのですから、本当に罪って怖い。
「私には、自分のしていることがわかりません。私は自分がしたいと思うことをしているのではなく、自分が憎むことを行っているからです」(ローマ人への手紙7章15節)
キリストと出会い、今はもうお陰様でそれらとは縁遠くなりました。
お月さんもぼくの二度の変化に、さぞや驚いていることでしょう。