翻訳者の書斎から 2 海外ではじめての「教会探し」の体験

『クリスチャン英会話ハンドブック』
田川 佐和子
Tagawa Sawako Mount Carmel Bible-Presbyterian Church /副牧師のご主人とともにシンガポールに在住/新生キリスト教会連合 町田クリスチャンセンター 会員

 『クリスチャン英会話ハンドブック』を執筆するにあたり、実際に使われている表現をできるだけ集めたいと思い、これまでにもらったカード、集会のチラシ、教会の週報なども参考にしました。それらを見ながら、どんな場面でどんな会話があったかを考えているうちに、はじめての留学先で緊張したこと、寮や教会の友人と楽しい時を過ごしたこと、英語で何とか祈れるようになった時のことなど、いろいろな思い出がよみがえりました。そしてもう何年も音信不通になってしまった友人のことを考えはじめると、肝心の原稿がなかなか進まないこともしばしばでした。

 海外で生活をする時、まずその地に慣れ、新しい生活に落ち着くために、近所には何があるのか、食料品はどこで買えるのか、中心街までの交通手段はどうなっているのかを調べます。さらに社会保障制度への登録、銀行口座の開設などもあるでしょう。クリスチャンであれば、これに「どの教会へ通うか」という大切な課題が加わります。知っている人のいない新しい地へ行っても、そこには神の家族がいて、聖日礼拝が守られており、それに加わることができるということは、クリスチャンの特権であり、喜びです。そしてそんな教会を探すのは、神様の導きのもとに行われるちょっとした冒険かもしれません。様々な教会を訪れ、多くの兄弟姉妹と出会う楽しさもあれば、なかなかなじめず不安になることもあるのではないでしょうか。今回は私のはじめての「教会探し」体験をお話しします。

 はじめての海外生活はアメリカのシカゴ郊外の神学校へ留学したときです。最初の日曜日には、同じ寮の学生に誘われ、白人の教会へ連れて行ってもらいました。賛美は歌詞にはうまくついていけなくても、知っている曲も多く、思ったよりもスムーズに礼拝の流れに加わることができました。説教の内容は聖書の箇所から想像がつくものの、聖書から離れて社会や日常での出来事のことになると、ほとんど分かりませんでした。ちょうどその日に説教をした牧師は、偶然私たちの神学校の教授でした。ということは、これから先の授業はずっとこういう感じなのかな、と少し不安になりました。

 その後、悩んだのは、日本人教会とアメリカ人教会のどちらへ行くかということでした。言語の障害を心配せずに礼拝し、交わりのできる方を取るか、それともせっかくアメリカにいるのだからこの機会を用いて、アメリカ人教会へいく方を選ぶかですが、私は思いきって後者を選びました。しばらくはフィリピン人の友人と、過半数が黒人の教会へ行っていたこともあります。彼らの礼拝は、まさに映画で見るようなもので、賛美は力強く、感情にあふれていました。説教も黙って聞いているのではなく、常に「アーメン!」「ハレルヤ!」「プレイズ・ザ・ロード!」と牧師のことばに合わせて賛美の声をあげていました。面白かったのは、説教のタイム・キーパーがいて、会堂のうしろで「あと何分」というサインを出していることです。たとえ残りが「あとマイナス30分」(つまりすでに30分超過)と出ていても、牧師も会衆も大して気にとめていないようなのです。

 結局、続けて行こうと決めたのは、神学校の近くにある白人の教会でした。多くの教会にはミッション・ウィーク(宣教週間)があり、留学神学生たちは、時々招待されて行くのですが、私もケニア人の友人に誘われ、その期間中に行ったのがきっかけでした。そこを選んだ理由は、大きな教会が数あるなかで、そこはこじんまりとしていて小さく、居心地がよかったこと、そして人々がとても温かく迎えてくれたことです。何百人という大きな教会に慣れていない私には、小さくて家族的な教会がぴったりだったのです。

 後日その教会は留学神学生に重荷を持っていることを知りました。自国を離れ、勉強に来た学生たちの慣れない生活をサポートしようというのは、尊い働きだと思いました。特に単身の留学生は、休暇の時期になると、行くところもなく、寮に残っている人が少なくありません。そんな学生のためのクリスマス・パーティに来てくれたり、家に招待したりと、クリスチャンの愛でもてなしてくれました。

 私もその教会では、礼拝や祈り会以外にも、大人を対象とした日曜学校に参加したり、子どものためのプログラムを手伝ったりと、温かく受け入れてもらい、第2の母教会のような存在になりました。そして今でも連絡をとりあっている家族がいます。

 これから長期で海外へ行かれる方が、その地でよい教会に導かれ、まだ見ぬ兄弟姉妹との豊かな交わりがありますようにお祈りいたします。