聖書の世界を地図でめぐる 過去と現在とつなぐ一冊
岡田秀樹
日本バプテスト連盟 福生バプテスト・キリスト教会員
高校時代の日本史の授業を思い起こした。〝講談日本史〟と呼ばれ、受験科目にない生徒も、この時間に眠る者は一人もいなかった。先生は生徒が歴史に興味を持ち、自ら勉強することを狙って、史実を広い観点から面白おかしく話した。私もまんまとその作戦に乗ってしまい、『日本の歴史』(中央公論社)二十六数巻を読破したのであった。この本も、地理からそのような興味を起こさせ、聖書を読み返す役割を担っているようだ。
聖書には、聞き慣れない多くの地名が出てくる。アブラハムから現在までも四千年あり、変遷したりなくなっている地名も多々ある。だが、地名(場所)の背景を深く知ることで、史実をより正確に学ぶことができるのである。
私はもっと聖書を肌で知りたいと思い、地図片手にここ二年でイスラエルをはじめトルコ、ギリシャ、エーゲ海、キプロス、ヨルダン、ローマなどの遺跡、史跡、考古学博物館を巡ってきた(残念ながらエジプト、シリア、レバノンは政情不安定で行けていない)。
カペナウムでは、シナゴーグとペテロの姑の家の近さを肌で感じ、それも街道側に居を構えていることなどを見て、私はイエスが伝道拠点となる弟子を選ばれたのだなと実感した。
また、トルコでは、聖書に登場する町から町まで、時には六百キロもあり、バス移動でも六時間以上かかる。パウロたちは東から西まで何日間かけて歩いたのだろうか、毎日、祈り議論することで信仰的にも成長したのでは、などと想像する。トルコ東部では、今でも遊牧用の石を積み上げた「羊の囲い」や、天幕生活をしながら移動する人々を至るところで目にした。パウロが天幕作りで生活の糧を得て旅をしたことを、思いめぐらすことができた。
私は旅行から帰るとグーグルアースを見ながら写真や資料をまとめる。だがこれは、現在の地図情報であり、当時の歴史を勉強するには、不適合な面が多い。そこで、『バイブルワールド』が役に立っている。本書は知りたいことや、気づかなかったことを地理的な観点からわかりやすくカラー図入りで解説してくれる。人物の動きだけでなく、戦争や契約の箱の移動ルートなどもカラフルに詳述されて、一目で的確に把握できる。その地を訪れたことがある人は、より当時の場景が思い浮かべ易いであろう。求めやすい価格設定にも、感謝している次第です。