風色のカレンダー 16 イースターの思い出

イースターの思い出
相馬幸恵
ミニチュアクラフト作家

 私が中学生のころ、わが家に大学生の青年が下宿していました。物静かで無口な彼とは、ほとんど話をしたことがありませんでした。その彼がイースターの日に、教会で洗礼を受けることになったのですが、内気で自分の殻に閉じこもりがちな私は、洗礼式に出席もせず、そそくさと教会を後にして帰宅してしまいました。

 しかしあのイースターの日から、何かが変わり始めました。母に買い物を頼まれた彼は救われた喜びのあまり、飛び跳ねながら自転車をこいだのでしょう。前かごに入れてあった卵をみごとに全部割ってしまいました。罪赦されて、新しく生まれ変わって歓喜している彼の姿は、やがて自分の殻から飛び出せないでいる中学生の私の心にも、神様を求める思いを起こしてくれました。

 その物静かな青年は、今は北海道の小さな教会の牧師をしています。

 「わたしは、よみがえりです。いのちです。わたしを信じる者は、死んでも生きるのです。」(ヨハネ11・25)