風色のカレンダー 18 小さな結婚式
相馬幸恵
ミニチュアクラフト作家
21年前の5月の聖日。友人が早朝に届けてくれたバラのブーケを手にして、父とヴァージンロードを歩き始めたとたん、私の心にさまざまな思いやシーンが駆けめぐり、ベールの下の頬に涙が伝い流れていきました。
もう半ば結婚をあきらめかけて、キャリアウーマンを目指していたころ、今の主人と出会って、なんと2回目のデートで受けたプロポーズ……。
当時はホテルの豪華な結婚式が流行していましたが、質素でも夢のある温かい式にしたいと、自分たちでできることはなるべく手作りでしようと決めました。招待状も二人で紙を選んで、イラストを描いたり色を塗ったり。ウェディングドレスを作る時間がなかったのが、ちょっと心残りです。でも集まってくれた会社の友人や上司に、さまざまな思いを残してくれた結婚式ができました。
今、わが家の冷蔵庫の片すみには、あのとき身につけたバラの髪飾りが、白からセピア色に変わって大事にしまわれています。