風色のカレンダー 7 お裁縫道具

お裁縫道具
相馬幸恵
ミニチュアクラフト作家

 わが家のリビング兼アトリエには、昭和初期の足踏みミシンが置いてあります。鋳物でできたペダル部分を踏むと、今でもきしむことなくちゃんと動かすことができます。木製の台座についている引き出しの中には、以前の持ち主が使っていたであろう、木の糸巻きや、真鍮の油差しなどがそのまま入っていて、よく手入れされて使われていたことがうかがえます。

 幼かったころは、よくこのタイプのミシンのペダル部分に座って遊んだものでした。かたわらにあったお裁縫箱の中身も、やはり遊び道具になりました。色とりどりのまち針を針山に、きれいな色糸をミシンの上に並べてみたりしました。時には、からまった刺繍糸をほぐしてみたり、とゆっくり流れていく時間の中で、今とは違うのんびりとしたひとときを過ごしたような気がします。

 朝、目を覚まして、母が作ったスカートやワンピースができ上がっていたりすると、とてもうれしかったものでした。私の手作りの原点は、そのころにあるのかもしれません。きれいなレースや布を見ると今でも気持ちが和み、何か作りたくなるのも、あの時の記憶がふっとよみがえってくるからだと思います。